現代人間学部 心理学科

心理学をキャリアに活かす:リレーコラム―学会発表編―心理学研究科修了生の学会発表(日本コラージュ療法学会第15回大会)

2024年02月28日

 心理学科・心理学研究科では、本学で心理学を学び卒業した先輩たちが、その学びを活かしてどのように働いておられるのか、コラム形式で紹介します。
 今回も前回に引き続き、学会発表を行った先輩からのコラムです。


 日本コラージュ療法学会 第15回大会は、2023年12月10日(日)に龍谷大学 大宮キャンパス 東黌(とうこう:東校舎)を会場として開催されました。学会発表を行った修了生に、学会で発表した研究内容や、学会発表についての感想を尋ねました。また、コラージュ療法学会の特徴や学会当日の様子についても聞いてみました! 

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どういった内容の研究発表を行ったのですか?
 本研究は、コラージュ作品に関する基礎的資料を得ることを目指し、女子大学生のコラージュ作品の「切り方」「貼り方」といった形式的特徴、「人物」「風景」など個々の切片の内容的特徴を性格特性(Big Five)との関連について、コラージュ療法基本材料シート集を用いて材料を統制して検討しました。

 次の3つの仮説を立てて調査を行いました。【仮説1】「切片数」は情緒不安定性が高い人の方が多いだろう。【仮説2】「重ね貼り」は情緒不安定性が高い人の方が多いだろう。【仮説3】開放性が高い人の方が「電車」を貼り付ける人が多いだろう。本研究はコロナ禍中に行われたため、大学生、大学院生の女性計25名を対象に、手渡し、もしくは郵送による質問紙調査と実験を行いました。

 その結果、切片数、重ね貼りと性格特性との関連はみられませんでした。切片数は各個人が何を好み、何をどれだけ表現したいのかによって、切片数が左右されるのではないかと考えています。重ね貼りについて仮説と異なる結果になったのは、用意された材料の数や自宅など自分が取り組みやすい場所で行ってもらったことが要因としてあるのではないかと考えています。性格特性と関連の傾向がみられた切り抜きは、それぞれ関連のみられた性格特性と類似した印象や象徴性を持っているようです。また作品に比較的使われた切り抜きは、気分や心的エネルギーの状態、個人の好みが反映されていると考えます。

 以上のことから、作品の意味内容と性格特性との関連が示唆されましたが、性格特性だけでは作品を読み取ることは出来ないこともわかりました。そのため、作品から制作者を理解するにあたっては、作品のテーマや印象、制作時の気分、制作者の語りなど様々なことを加味して見る必要があると考えています。


学会発表をしてみてどうでしたか?
 今回の発表は、私が大学、大学院生時代にゼミの指導をしてくださっていた佐藤睦子先生との共同発表ということで、佐藤先生が横について下さりながらの発表でした。また、同期や先輩・後輩も応援に駆けつけてくれていたので、緊張もありつつも落ち着いて発表出来ました。

 発表の場からは、一人一人のお顔が見えていたので、真剣に興味を持って聴いてくれていることが伝わってきました。質問が少なくて時間を持て余すことを危惧していたのですが、想定していた以上に質問してくださった方がいて、驚きと嬉しさがありました。意見や感想から、また研究する機会があるのであれば活かしていきたいな、と思える学びもありました。

                   
        
 発表スライドの前のKiさん  

  フロアからの質問に応じるKiさん
  (共同発表者の佐藤睦子先生と共に)

日本コラージュ療法学会の特徴や当日の学会会場の様子をお聞かせください!
 学会発表当日の午前中は参加者の皆さんが1つの部屋に集まって、講演やシンポジウムに参加されていました。午後は前半に基礎研究の発表、後半に事例研究の発表がありました。基礎・事例ともに研究発表が2つずつあったので、どちらか気になる方に参加するという形でした。なので、魅力的な研究を前にしてどちらかを選ぶのが難しく、私は時間ギリギリまで悩み続けていました。

 学会発表の前日にはワークショップが開かれており、コラージュ療法についての講義や体験的に学ぶ場が設けられていました。久しぶりに自分でコラージュを作って、参加者の皆さんと共有した時間はすごく楽しかったです。

 全国各地から、医療、福祉、教育等の様々な職種の方が参加されており、コラージュ療法が色々な人に興味を持たれていることを実感しました。コラージュ療法に興味のある方は是非ワークショップや大会に参加していただければな、と思います。

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 以上、先輩から後輩に向けてのコラムとメッセージでした。

 日本コラージュ療法学会のホームページによると、コラージュ療法とは、“心理療法の一分野である芸術療法に属する方法である。・・・(中略)・・・芸術の技法のひとつであるコラージュ(切り貼り遊び)を主として利用しようとするものである。”と紹介されています。Kiさんも記してくれていますが、コラージュ療法は医療、福祉、教育等の分野でも活用されているようで、今回のKiさんの研究にも様々な職種の方が関心を持って下さったようですね!
 コロナ禍中で研究を遂行することには苦労もあり、様々な工夫が必要であったかと思います。本研究の知見や今回の学会発表での経験が、Kiさんの今後の研究や臨床実践の糧となりますように・・・益々の活躍を期待しています!

 それでは、次回もまたご期待ください。


担当:本学心理学研究科修了生 Kiさん、向山泰代、広報担当
  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 17:23研究活動大学院

心理学をキャリアに活かす:リレーコラム ―学会発表編― 心理学研究科修了生の学会発表(日本心理学会第87回大会)

2024年02月15日

 心理学科・心理学研究科では、本学で心理学を学び卒業した先輩たちが、その学びを活かしてどのように働いておられるのか、コラム形式で紹介します。
 今回は学会発表を行った先輩からのコラムです。
 

 2023年9月に開催された日本心理学会第87回大会(神戸で開催)にて、2名の心理学研究科修了生がポスター発表を行いました。初めての学会発表を経験したお二人に、学会ではどのような研究内容を発表したのか、そして学会発表の感想を尋ねました。また、各学会には個性もありますので、(後輩の参考のためにも)日本心理学会の会場の様子を聞いてみました!

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1.Kuさん
① 研究内容
 今回私は、幼児(3~5歳児)との関わり行動の中で、青年にとって抵抗感が強い行動を調査し、幼児に関わることへの抵抗感と、「幼児への関心や関わりへの感情」「曖昧さへの態度」との関連について検討した内容を発表しました。対象としては、大学生および専門学校生の計210名(女性177名、男性30名、無回答3名)に質問紙/Webにてアンケート調査を実施し、回答をしていただきました。
調査結果を分析したところ、幼児との関わり行動(34項目)の平均値の高低から、関わり行動の平均値が低い人の方が世話やしつけ等、幼児に注意を向けながら、統制や制限を課すような行動への抵抗感が強いことが分かりました。
 また、関わり行動への抵抗感と「幼児への関心と関わりへの感情」「曖昧さへの態度」について、関連しているのかを検討するために相関を求めました。結果、幼児と関わったり、接近したりということに対して抵抗感が強いと、幼児に対する関心が低かったり、『うるさい』『汚い』などのように思うことが多いということが分かりました。加えて、曖昧なことが多い状況に対してどうしたらいいかわからないと混乱したり不安になったりしやすいことも示されました。一方で、幼児への関心が高いと、曖昧なことが多い状況を楽しもうとしたり、曖昧なものを曖昧なままで、そういうこともあると考えたりする傾向が強いことが示されました。
 以上から、幼児に対する興味や関心を高めたり、幼児と関わる時に生じる曖昧さに対しても『おもしろい』と思えることが、青年の感じる幼児への関わり行動に対する抵抗感を減らすことにつながる可能性が示唆されました。
 まだまだ検討しなくてはいけない部分はたくさんあるので、今後も引き続き研究していけたらと思っています。

②学会発表を経験して
 発表の仕方には色々とありますが、私が今回行ったのはポスター発表で、プリントアウトして持参した大きなポスターをパネルに貼り、その前に立って興味を持ってくださった方に説明するという形式でした。
 正直なところ、2〜3人の方が興味を持ってくださったらいいかなと思って参加したのですが、思っていた以上に見に来てくださる方がいて、2時間という持ち時間があっという間に終わりました。内容について質問や意見をいただくことで考察を深めるきっかけになったり、自分ではぼんやりしていた部分が輪郭を得たりして、貴重な機会になりました。研究内容について意見をいただける機会は多くはないので、ありがたいと同時にとても楽しい時間でした。

③学会や当日の会場の様子
 日本心理学会という心理学領域の中でも大きな学会の大会だったため、多くの方が参加されていました。ポスター発表以外にシンポジウムや講演などもあり、人気のところは後ろの壁際で立ち見される方がたくさんいらっしゃることもありました。色んなプログラムに皆さん気軽に出入りしていた印象です。
 9月とはいえ外はかなり暑くて、会場内は割と涼しくされていたので、いかに服装で調整するかという感じでした。基本的に普段着で参加されている方が多く、発表がある場合はスーツやオフィスカジュアルといった服装の方が多かったです。会場の一部に食事ができるような休憩場所があり、自由に飲めるお水が設置されていて、各々休憩したりお話ししたりしていました。
 一角には主に心理学に関する書籍が販売されているところもあって、主に専門書を吟味出来たり、書店によって様々ですが10~20%引きで購入できたりします。最高です。その場の雰囲気や割引に引っ張られて買ってしまうことが多いと思いますので、会場参加される場合には、リュックなど大きめのかばんで参加されることをお勧めします。

    
ポスターの前で(Kuさん)                    会場で質疑応答中


2.Kiさん
①研究内容
 学会にて発表した研究の内容は、メンタルヘルス不調に関する相談行動をより促進させるために、友人や家族、専門家への相談行動の意思決定プロセスを調べ、相談行動を促進もしくは、抑制する規定因を明らかにすることを第1の目的とし、また、相談相手によって意思決定プロセスに差異があるかについて調べることを第2の目的としました。先行研究で明らかにされたリスク回避行動のプロセスを参考に、新たなメンタルヘルス不調に関する相談行動プロセスの仮説モデルを構築し、検討しました。
 その結果、メンタルヘルス不調に関する友人や家族への相談行動のプロセスは、不調を放置することへの危機感が、行動を起こすべきという目標意図を高め、目標意図が、不調の放置に対する周囲からの評価と共に、相談行動を意図させ、そして行動を忌避する態度を抑制し、相談に至るということが分かりました。また、専門家への相談行動のプロセスは家族や友人とは異なり、専門家に相談する人が周囲にどれぐらいいるかの認知が低い場合、相談行動を意図させず、行動を忌避する態度が促進され、相談に至らないということが分かりました。

②学会発表を経験して
 研究を学会発表したことにより、様々な専門領域でご活躍されている方々から研究についてのご意見をいただくことができました。実際に対面で研究についての反応や、様々なご意見をいただいたことにより、研究し、それを発表することの意義を改めて感じることができる貴重な体験でした。この気づきは学会に参加したことにより得られたので、本当に参加して良かったと思っております。

③学会や当日の学会会場の様子
 今回、私がポスター発表させていただいた学会は日本心理学会でしたので、基礎から専門領域まで本当に広い領域における心理学研究のポスター発表や、シンポジウムが行われていました。また、広い倉庫のような会場がいくつもあり、老若男女たくさんの方々が参加されていました。ポスター発表の際は、研究に興味を待たれた方や、質問に来られた方のために、研究内容を説明したり、名刺交換などをしたりして、気づけばあっという間に2時間過ぎていました。最初は、初めての学会参加でとても緊張していましたが、学会に参加されていた大学の先生方が鼓舞しに声をかけてくださったおかげで緊張は緩和され、研究に興味を持ってくださった方々と有意義で興味深い意見交換ができ、最終的には時間が過ぎるのを忘れてしまうぐらい熱中した時間を過ごすことができました。
 
     
パワーを注入しに来てくださった先生方と記念写真


       
ポスターの前で

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 お二人とも学会会場では様々な研究者、他大学の学生・院生等と議論することが出来、とても有意義な時間を過ごしたようです。自身の研究について、質問を受けたり、助言を頂いたりすることを通して、学内とはまた違った学びがあったことと思います。
 今後も大学院生(学部生の皆さんも!)が積極的に学会の場で研究発表を行い、自分の研究を社会に発信してくれることを期待しています。


 以上、先輩から後輩に向けてのコラムとメッセージでした。

 公認心理師・臨床心理士は現場での自らの実践を振り返り、過去の知見と照らし合わせることが求められます。その上で、後の時代に役立つ知見を一つ一つ、積み重ねていくことが求められています(巨人の肩の上に立つ、と言われたりもします)。今後も多くの先輩たちが学会発表にチャレンジしていきますので、後輩・後輩になる予定の皆さまも“先輩の肩の上に立つ”意識を持ってもらえたらと思います。

 それでは、次回もまたご期待ください。


担当:本学心理学研究科修了生 Kuさん、Kiさん、松島るみ、広報担当
  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 13:03研究活動大学院

研究報告  「小学生の学習適応に関連する幼児期の環境とその支援効果について」(その1)

2022年08月02日

私たちは、2019年9月のさいころ日記に、福岡県田川市への研究取材旅行の記事を掲載しました。
さいころ日記:研究取材旅行  ―福岡県田川市立金川小学校を訪ねてー
思えばあの頃は、(マスクの必要もなく)自由に全国を旅行できる、幸せな時代でした。

今回は、私たちがその後に行ってきた研究の成果について、ご報告したいと思います。
私たちは、先にご紹介した金川小学校の実践例も参考にして、幼児期の生活経験や遊びが、小学校入学後の学習の基盤形成になるだろうと考えました。
そこで2019年12月頃、幼児の発達支援を目的として、京都府内の2保育園で5歳児に対して、(1)数遊び、(2)アナログ時計を用いた保育、(3)言葉遊びについての実践的研究を行いました。
研究では、以下の写真にある手作り教材を、5歳児のクラス担任の先生に使ってもらい、約1ケ月間、保育の中で、それぞれの活動を実践していただきました。

(1)「数遊び」は、10までの数が書かれたカードを使って、トランプのようなカードゲーム遊びを子どもたちにしてもらうというものです。


(1)数遊びで使用したカード


(2)「アナログ時計を用いた保育」は、時計が示す時間および時間の経過を、保育の中で子どもたちに意識してもらうように、担任の先生から促してもらうものです。


(2)保育で使用したアナログ時計パネル


(3)「言葉遊び」は、言葉集め、しりとり、なぞなぞを、絵パネルを使って、遊びの中で担任の先生から子どもたちに提示し、言葉遊びを誘導してもらうものです。


(3)言葉遊びで用いたパネル

そして、約1ケ月の保育実践の前後で、子どもたちを対象として、私たちが個別に、数、時計、言葉に関する課題を行い、これらの遊び・保育による短期支援効果がみられるかについて、調べました。結果は、1ケ月という短い間でしたが、それぞれにおいて、何らかの変化、効果がみられるというものでした(詳細は、最後に掲載した文献リストにあります)。

こうして、2019年度の研究では、1ケ月の保育が、5歳児の皆さんに、数や言葉、時計や時間への興味・理解を促すことが示唆されました。その後は、残念ながら新型コロナウイルスの感染拡大となり、私たちが、幼児に直接課題を行う研究は、実施が難しくなりました。
しかし、研究結果から得られたような遊びや経験の重要性は保育現場でも理解され、実践のヒントにしていただいています。

さらに、同じ2019年度には、同地域の3保育園の1歳児~5歳児の家庭に、4週間に4冊の絵本(私たちが年齢に合わせて選択したもの)を貸出し、読み聞かせの効果を保護者にアンケートで尋ねる「絵本の読み聞かせブログラム」も実施しました。
このプログラムでは、家庭で保護者の方とゆっくり絵本を楽しんでもらえますので、コロナ禍でも実施可能であること、さらには、絵本の読み聞かせが家庭での関わりに、よい影響を与えることが、参加いただいた保護者の方々や園に広く理解されて、今年度も4年目として継続しています。
「絵本の読み聞かせプログラム」の結果については、今年度末頃、「結果報告その2」としてご報告したいと思います。

(報告:高井直美、伊藤一美、薦田未央)

文献リスト
1)薦田未央・高井直美・伊藤一美(2021)就学前児の保育における「遊びプログラム」の検討(1)―数カードによる数選び― 日本発達心理学会第32回大会発表論文集  29PM2-3A-PS1
2)伊藤一美・高井直美・薦田未央(2021)就学前児の保育における「遊びプログラム」の検討(2)―アナログ時計を用いたプログラム導入の試み― 日本発達心理学会第32回大会発表論文集 29PM2-3A-PS2
3)高井直美・薦田未央・伊藤一美(2021)就学前児の保育における「遊びプログラム」の検討(3)「しりとり(言葉集めを含む)」「なぞなぞ」による言葉遊びの試み 日本発達心理学会第32回大会発表論文集 29PM2-3A-PS3
  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 20:24研究活動

後藤 伸彦先生の論文が国際学会の最重要論文に選ばれました!

2020年03月12日

本学科の専任講師 後藤 伸彦先生の論文
Can Brain Waves Really Tell If a Product Will Be Purchased? /脳波は商品の購入を予測できるか?
が、このたび国際学会で栄誉ある選出を受けました。
ほんとうにおめでとうございます!
以下、後藤先生からのご報告です。

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以前このブログでもご紹介しました、私が以前勤めていた同僚とともに行った研究が、Neuromarketing Science & Business Association という学会によって、2019年中に発表されたニューロマーケティングに関する最重要論文の一つとして選ばれました。

この学会はニューロマーケティングという、脳機能や脳活動とビジネスやマーケティングを関連付けた研究を推進する学術者の集まりです。
この学会では毎年、世界中で発表される論文の中から、独自にニューロマーケティングに関連する論文を選出し、学会が毎年発刊している本で紹介しており、私の研究もその中で紹介されることとなりました。
2019年は世界中から16本の論文が選ばれました。
また私は2017年にも同様に選出を受けており、今回で2回目です。

今回の論文は、現時点における脳活動計測技術のマーケティングへの応用の限界について注意を促すものであり、ニューロマーケティングを広めようとする学会とは一見、反対するような我々の論文が選ばれたことを特にうれしく思っております。
引き続き、人間の不思議さを明らかにする面白さと、社会への貢献の両方の側面をかなえた研究に挑戦して参ります。

学会が発刊するYearbook(英語)には、ほかの研究と実際のビジネスでの脳活動計測技術等の応用が紹介されており、どなたでも購入が可能です。

https://nmsba.com/webshop/product/1/53/pre-order-neuromarketing-yearbook-2020

今回選ばれた我々の研究(英語)は、無料で全文が読めます。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnint.2019.00019/full

わかりやすい研究の日本語解説を前回のブログに載せています。
こちらをご覧ください。

   報告:後藤 伸彦  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 17:44研究活動学科のトピック

「空想の友達」についての心理学的考察

2019年12月27日

心の中にだけ存在する「空想の友達」を、あなたは持っていますか?

「空想の友達(imaginary companions) 」とは、子ども(あるいは大人)が作り出す、目に見えない友達のような存在、と言われています。
狭い意味では、実在物が全く存在しない、心の中だけで作り出すものとされますが、広い意味では、ぬいぐるみや人形など形あるものを、「心の友達」とする場合も含みます。
「空想の友達」は、子どもの時期にみられる現象と思われがちですが、テディベア等を、子どもから大人に成長する過程で、ずっと友達にしている場合や、中高生が日記を書いていて、心の友が登場することもあります。



Hoff(2005)によれば、「空想の友達」に関する研究は、古くは19世紀の終わりから行われており、当時は、現実での不適応の表れとして理解されていました。しかし、精神的適応の良さや、芸術性の高さとの関連が、報告されている研究もあります(Schaefer,1969など)。
ここでは、筆者の研究をもとに、ぬいぐるみ等も含む、広義の「空想の友達」が、心の発達にどのように関係しているかについて、考察します。
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1.幼児にとっての「空想の友達」と想像力の発達
筆者が行った3、4歳の幼児の保護者への聞き取り調査では、約4割の幼児に、広義の「空想の友達」の形成が確認されました。また「空想の友達」を形成している子どもの方が、そうでない子どもよりも、他者の心の理解の発達が早い傾向がありました(高井,2017)。
自分で空想の友達を生み出す想像力は、3歳頃から発達してきますが、その想像力と他者の気持ちを理解し、想像することには、深い関係があると思われます。
 
2.女子大学生の過去の「空想の友達」と現在の心理特性
一般的に女子の方が、「空想の友達」を作る割合が高いとされています。

筆者は、女子大学生を対象に、幼児期から現在までの間に、「空想の友達」を作ったことがあるかということと、現在の様々な心理特性との間に、どのような関連があるかについて、質問紙で調査しました(高井,2018)。
その結果、子ども期や青年期に、空想の友達を作ったことのある人はない人よりも、審美的価値、開放性などの心理特性の得点が高い傾向が、わかりました。
審美的価値とは、身の回りの物の美しさに惹かれたり、芸術的な関心が強かったりする傾向で、開放性の性格とは、独創的だったり、想像力のある特性とされています。また一方で、情緒不安定の得点の高さと空想の友達を作り出す傾向が、関連する場合もありました。

女子大学生への調査は、その後も続けていますが、特に、審美的価値との関連は強く出る傾向が一貫してみられ、人が周りの世界に対して、美的な強い感受性を持つことが、想像性の豊かさと関わっているのではないか、と考えられます。

3.アニメや文学作品等における「空想の友達」
空想の友達が、アニメや文学作品で表現されることは多々あります。
例えば、宮崎駿監督の「となりのトトロ」では、4歳の女の子メイの前に、トトロは現れました。

この映画では、この出会いが、子どもの心を豊かにすることについて、多くの人々の共感が得られたように思います。

4.友達ではないけれど、心に存在する「空想の存在」(たとえば「桃太郎と鬼」)
最後に自分自身の体験ですみません。
筆者は、岡山県出身で、子どもの頃、祖父の住んでいた田舎の川で、「ここから、桃太郎が流れてきたんじゃ」と教えられていました。
また(桃太郎のモデルが祀られている)神社に、よく遊びに行っていました。
そのようなわけで、桃太郎は神様としてこの地に存在し、桃太郎が退治した鬼は、もういない、と信じていました。

ところが、小学校2年の時、小学校からその神社に遠足で行き、神社の渡り廊下の奥まったところに、桃太郎が退治した鬼が、お釜の下でずっと生きていることを聞かされてから、大変なことになりました。
夜寝る前に、どうしても、鬼が頭の中に出てきて、怖くて仕方がなかったのです。空想の存在は、時に、子どもにとって得体のしれない、恐ろしい存在になります。
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人は成長の過程で、自分で「空想の友達」を作りだしたり、「空想の存在」を強く意識したりして、想像の世界でも生きています。
そのような経験が、現実世界を生きていくうえで、豊かな感受性や独創性を作りだしたり、他者の心を推測したりする力にもなっていくのではないか、そのように考えながら、もう少し研究を続けたいと願っています。

【引用文献】
Hoff,E.V. 2005 Imaginary companions, creativity, and self-image in middle childhood. Creativity Research Journal, 17, 167-180.
Schaefer,C.E. 1969 Imaginary companions and creative adolescents. Developmental Psychology, 1, 747-749.
高井直美 2017 心の理論とふり遊びおよび言語発達との関連  京都ノートルダム女子大学心理学部・大学院心理学研究科 研究紀要 プュケー,16,25-35.
高井直美 2018 「空想の友達」の生成と青年期の心理特性との関連 日本発達心理学会 第29回大会 P7-1.


 報告:高井 直美  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 07:09研究活動

うっかりミスの心理

2019年11月28日

先日、うっかりミスをしてしまったことについて話したい。

その日の前日はトラブル対応で忙しく、夜もあまり眠れなかった。
自宅を出てからも、前日のトラブルについて考えながら移動していると、本学の正門に着いた。
ただ、中に入っていく学生や教職員を見て、なぜか違和感を感じた。

「なんかいつもと違う!おかしい?」

なんと、その日は他の大学で講義をする日だったのだ。
正門の前で青ざめて、すぐに引き返して目的の大学に急いだ。
幸い、本学からあまり遠くない大学であったので、なんとかギリギリ、少しの遅刻で間に合った。
家を出るときは、ちゃんとその講義の準備をして出かけたのだが、考え事をしていると途中でいつもの勤務地に向かってしまったのであった。

この例のように、私たちは最初の意図とは異なる行為をうっかり行ってしまうことがある。
例えば、カラつきの落花生を食べようとカラをとったのに、カラではなく中身の方を捨ててしまうような場合である。

このような自分の意図と反した行為のエラーは スリップ(slip) と呼ばれている。
スリップが起こると、私たちはびっくりする。
それは自分が思っていた意図と実際に行った行為がかけ離れていることに気づくからである。

日常生活においてスリップに出会うことはそんなに多くはないが、簡単な実験をすることでスリップを体験できる。
それは急速反復書字法と呼ばれる実験で、紙と鉛筆を用意して特定の文字をできるだけ速くたくさん書き続けるだけである。
ひらがなの「お」、漢字の「大」「類」などにおいて、別の文字を書いてしまう書字スリップが生じるとされている。
ぜひ実際に試して、スリップを体験していただきたい。

「お」を急速反復書字した例


  報告: 廣瀬 直哉

追伸:実はこのブログの文章を書いているときにもうっかりミスを行って作成途中の文章を消してしまい、大幅に書き直したことを追記しておく。  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 18:41研究活動

研究取材旅行  ―福岡県田川市立金川小学校を訪ねてー

2019年09月20日

去る8月30日、心理学科教員3名は、福岡県北九州市の小倉駅からJR日田彦山線で約1時間南下し、福岡県田川市に到着しました。
私たちが現在取り組んでいる研究テーマ「小学生の学習適応に関連する幼児期の環境と支援効果」の取材のため、20年近く就学前からの学力保障に取り組んできた、田川市立金川小学校を訪問するためです。
田川市は、筑豊炭田の重要拠点の一つとして、かつては栄えたところで、その歴史は、田川市石炭・歴史博物館で辿ることができます。 
写真は国登録有形文化財になっている旧三井田川鉱業所伊田堅坑櫓で、明治の頃、筑豊が深部採炭の時代に入ったことを象徴するものです。


田川市は、「月が出た出たー」で始まる炭坑節発祥の地でもあり、田川市石炭記念公園の炭坑節記念碑の側には、石炭を掘りだした後、捨石を積み上げたボタ山のミニチュアがありました。


そこで私たちは、1950年代に日本のエネルギー政策が、石炭から石油への移行が行われ、国内での石炭の生産が急激に衰退していく過程で、かつての炭鉱の町が過疎化していったことを知りました。
全国的に中学生の校内暴力が問題になった1980年代、筑豊の経済力低下と地域コミュニティの変化の問題を抱えていた金川地区では、小学生の学力低下や中学生の荒れが顕在化し、1990年代から2000年代にかけて、子どもたちの学力保障をするために、学校および地域社会と学校との関りを変えるための改革が、始まりました。
その経過は、2006年に出版された以下の本に詳しく紹介されています。


今回私たちは、この本にも紹介されている金川小学校での長年の学力保障の取り組みについて、その実施に携わってこられた先生方から、詳しく当時のこと、また現在の課題について、お話を伺ってきました。
主にお話しくださったのは、現在は他校に異動されていますが、金川小学校でこの取り組みに関わってこられた満倉先生で、現在の金川小学校の校長、道高先生、人権・同和教育担当、中山先生にも、お話に加わっていただきました。中山先生は、約20年前からの、学校と地域の方々との関りについて、よくご存じの方で、今回お話を伺うことができて、とても幸運でした。

先生方のお話から、金川地区の小中学校が抱える課題に対しては、「授業づくり」「協働教育」の2つの視点から、「家庭と学校と地域が交わる」取り組みを行っていき、そのことが成果を上げてきたことを学びました。
たとえば、金川小学校では、毎年6月頃、小学校1年生とその保護者を学校に招き、「わくわくドッキリDAY」というイベントを行っています。ここでは、親子で行う楽しい遊びの中に、学びの基礎があるということを、親御さんにも理解してもらえる場となっているそうです。 
遊びの具体例は、親子で紙工作、親子で買い物体験、せんたくものほしゲーム(天秤体験)、トランプ並べ、時計遊び、豆を箸でつまむなど、楽しみながら、遊びながら、学びの基礎作りを行うものです。ここでの、「遊びと学びの関係」については、就学前からの家庭環境に関する保護者アンケート調査と、就学後の学力の見取り調査の結果を踏まえて、検討されています。

私たちが特に関心をもったのは、まず家庭環境と子どもの学習との関係を調査し、そのデータを基に、そこで見出した関係を、子どもたちとその親に、「楽しい親子遊び」として還元していくということでした。
またこうした、調査結果を保護者の皆さんにもフィードバックしていく過程がなかったら、調査は継続してこなかったという、中山先生のご指摘に、強い感銘を受けました。
就学前実態調査相関表から、子どもの学力と関りが深いこととしてわかった家庭での経験は、以下の①~④にあり、それを保護者や保育所の先生方へも、伝えてこられたと、満倉先生は教えてくださいました。

 ①基本的な生活習慣
    早寝、早起き  朝起きたらあいさつ  顔を洗う、歯を磨く  など
 ②言葉や数にふれる体験・環境
    言葉集め 連想ゲーム トランプ ままごと カルタ 絵本の読み聞かせ など
 ③約束やきまりを守れる子に
    約束やきまりを守れる子は、言葉をよく知っている傾向が強い
 ④相手の話を聞く力
    算数上位のほとんどは、聞ける傾向
    話を最後まで聞く習慣をつける
    ほめる・喜ぶことが大切 まずは、大人が子どもの言動・気持ちを受け止める

金川小学校でのこうした取り組みは、地域の人々との関りにもつながっています。
校区で行われる「まつり金川」では、小学生は500円もって買い物に行き、お店を開く地域の方は、あえてお釣りが出るような値段設定をして、子どもたちが実用的な場面で、お金の計算を経験できるようにサポートしているそうです。

最後に、満倉先生から、大切にしたいこと(取り組みの本質)は、「子どもの学びや育ちを、地域の人々と共有すること」であることを教えてもらいました。また、中山先生からいただいた、田川市人権・同和教育推進協議会が作成している、子育てリーフレットには、以下の図の、四葉のクローバーにおいて、小学校と保育所など就学前施設が連携して行ってきた「就学前実態調査」を踏まえた、子どもをもつ親御さんたちへの提言が示されています。

  
以上、金川小学校の取り組みの経過・成果を詳しく教えていただき、私たちが京都でこれから何を研究していくのか、どのようにして子どもたちとその地域の人々と関わっていけるのか、という指針もいただき、大変実り多い旅となりました。

以下の写真は、筑豊一宮と言われている、田川伊田駅近くの風治八幡宮です。
旅の無事と成果に感謝して、帰路につきました。


報告者: 高井 直美・伊藤 一美・薦田 未央

 紹介図書:「金川の教育改革」編集委員会  2006 就学前からの学力保障―筑豊金川の教育コミュニティづくり 部落解放人権研究所  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 11:08研究活動

脳波は商品の購入を予測できるか?

2019年07月08日

近年、学術分野、民間分野でニューロマーケティングやコンシューマーニューロサイエンス(消費者神経科学)と呼ばれる領域の研究や応用が盛んに行われています。これは神経活動を観察することで、人がどんな商品を好むか、またどんな商品を実際に購入するのかを予測したり、マーケティングに活かしたりしようとする領域です。
今回は先日公開されたばかりの私の論文についてご紹介します。

 ※ 英文ですが、全文が無料で読めます。→全文は こちら(全文)
 ※ なにをして、どんな結果が得られたのかだけ知りたい人は こちら(1枚絵) をご覧ください。

これまでのマーケティングは、一般の方に「この商品についてどう思いますか」と尋ねたり、実際に商品を試してもらい感想を尋ねたりという方法が一般的であり、現在も多くのマーケティングではそのような調査方法が取られていると思われます。
しかし、このような方法では、調査の対象となった一般の方が、自身の回答を意図的に操作できるという問題がありました。
これはどういうことかと言うと、「せっかく調査への協力を依頼されたのだから、タメになるような厳しい意見を言わないと」と思ったり、逆に「あまり厳しいことを言うとかわいそうだから、褒めてあげよう」と思ったりするなど、実際の考えより厳しく言ったり、逆に甘く言ったりしてしまうということです。

その一方で、ニューロマーケティングと呼ばれる領域では、人の脳内の血流の変化を調べられるfMRIや、脳内の活動に合わせて発せられる微弱な電波を頭皮からキャッチできる脳波測定装置を使います。脳内の血流変化や、脳波は「意図的に操作する」ことが困難です。
またこれらの装置では意図的な考えが出てくる(「厳しく言おう」や「甘く言おう」など)より前の、直感に近い好みや考えを測定することが可能です。特に脳波は、数10ミリ秒から数100ミリ秒(1秒の100分の1~10分の1)の細かさで判定が可能というメリットがあります。そのため、ニューロマーケティングを新時代のマーケティング手法にしようと研究が行われており、すでに実践に移している企業などもあります。

これまでの研究では、例えば60個の商品を1つずつ参加者に見てもらい、人気のあった商品30個を見たときの脳波を平均し、また人気のなかった残りの30個を見たときの脳波を平均し、それらを比べるということをしていました。
そうすることで、人気のある商品を見ているときの脳波の特徴というものを調べようとしていたのです。

しかしながら、実際のマーケティングで知りたいことは、30個の商品に対する脳波の平均ではなく、企業が売りたい、ただ1つの商品に対する脳波であり、その脳波が他の(ライバル企業や自社の既発の)商品より消費者に好まれるか、であるはずです。
そこで私たちのチームでは、これを調べることのできる実験を行いました。

実験ではまず12個の商品を様々な角度から撮影しました。そしてその写真を実験参加者に1枚ずつ見てもらいました。
参加者にはあらかじめ、実験の終了時に謝礼としてお金が払われること、その謝礼の一部を使って、実験中に見た商品の中から1つを買ってもらうことを事前に伝えてありました。これは、参加者に、実際に商品を購入するときと同じ気持ち(脳の働き)で商品を見てもらうための操作です。

写真を見てもらっているときの実験の流れを示したのが図1です。

(1)~(3)の3つの画面を1セットとして、図1では2セット分の流れが示されています。
写真が提示されている3秒間(上図の(2))の脳波を測定し、同じ商品ごとに脳波を平均しました。

次に、同じ12種類の商品を、今後は画面に2つずつ提示し、どちらの商品のほうが好きか、選ぶように参加者に求めました。
好きな商品を選択してもらっている時の実験の流れを示したのが図2です。これにより、参加者に多く選ばれたものを人気のある商品、あまり選ばれなかったものを人気のない商品としました。そしてその行動と、脳波に関係があるのか、つまり脳波から行動が予測できるかを調べました。


まず従来の方法通り、人気のあった6商品と人気のなかった6商品の脳波を比較しました。その結果が図3です。

x軸の0と書かれているところが写真が提示されたタイミングです。そこから300ミリ秒程経ったところで、N200と呼ばれる脳波の成分が見られます。これは直感的で非意識的な注意の高まりを示します。青い線と比べると、赤い線が大きく落ち込んでいるのがわかります。

さらに図4では、400ミリ秒から800ミリ秒の後期陽性電位(late positive potential: LPP)と更にその後の陽性徐波(positive slow wave: PSW)においても、人気のあった商品の平均値を示す青い線が、人気のなかった商品の平均値を示す赤い線より高くなっています。
LPPはより意識的な注意の高まり、PSWはワーキングメモリの活動も含めたより複雑の処理が行われていることを反映していると考えられています。
これは我々のチームが先行研究で示した結果と一致しており(Goto et al., 2017)、先行研究では30以上の商品を平均していたのに対して、本研究では複数の写真を用いることで6つずつの商品であっても脳波の違いを示すことが可能であることを明らかにしました。


上の図では6つの商品を平均していましたが、次に1つの商品から得られた脳波で行動を予測できるかを調べました。
これには、人気のあった商品のうちの1つが人気のなかった6つの商品の平均より有意に脳波の振幅が陽性(プラス)方向に大きくなるか、または人気のなかった商品のうちの1つが人気のあった6つの商品の平均より有意に脳波の振幅が陰性(マイナス)方向に大きくなるかを調べました。つまり、人気のあった1つの商品の脳波>人気のなかった6つの商品の平均、または人気のなかった1つの商品の脳波<人気のあった6つの商品の平均となるかを調べました(より厳密な条件に関しては論文をご参照ください)。
これを12個すべての商品に対して行い、それぞれの脳波の成分において12個中何個の商品が条件を満たすか、言い換えるならば、何%の確率で、脳波が行動を正確に予測したかを数値化しました。
結果は、全体では70.8%の確率で脳波が後の行動を予測しました。
またN200に限定した場合は50%、LPPは66.7%、PSWは77.1%でした。

皆さんはこの予測成功率は高いと思うでしょうか?それとも低いと思うでしょうか?
自分が会社の社長だったとして、自社の商品が売れるかどうかの判定を脳波によって行いたいと考えますか?
少なくともN200では「予測が正しいかどうかは半々」という結果でした。

今回の我々の結果がどれだけ一般化できるものであるかはより多くの実験を待たねばなりません。
たとえば今回は我々が選んだ様々なジャンルの12個の商品が実験に使われていますが、他の商品が使われれば違う結果になるかもしれません。
また同じジャンル(例えば12個の異なるメーカーのチョコレート)であれば、より高い予測率を示すかもしれませんし、逆により低い予測率を示すこともあるでしょう(イヤホンかチョコレートかに対する好みよりも2種類のチョコレートに対する好みの方が似ている可能性があるためです)。

今回の実験からの我々の結論は、神経活動のマーケティングやビジネスへの応用は、特に一つの商品に対する神経活動の場合には、まだ多くの研究が必要であり、注意が必要である、というものです。
また応用する際には、神経活動だけではなく、複数の指標を用いて、それらの一貫性の有無について考えを巡らせることが重要であると考えます。
科学や技術の進歩というものは、たった1つの実験によって達成されるものではなく、たくさんの人達による、数多の実験や観察、調査によって達成されるものなのです。

  報告者: 後藤 伸彦

(図1、2の商品のイラストにはいらすとやのイラストを使用させていただきました)  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 10:14研究活動

第24回FDフォーラム『大学におけるダイバーシティ』に参加しました

2019年03月04日

3月2日、3日に立命館大学衣笠キャンパスで開催された、「第24回FDフォーラム」に参加しました。「FD」という言葉は聞き慣れない方も多いかもしれませんが、「faculty development(ファカルティ・ディベロップメント)」つまり、「教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取組の総称(文部科学省)」を意味します。
 
毎年この時期に開催されるFDフォーラムは全国から多くの大学関係者が集結し、より良い授業方法や学修の成果をどのように測るかなど、様々なテーマで議論が行われます。
今回のFDフォーラムでは2つのシンポジウムと11の異なったテーマによる分科会、ポスター発表等が行われ、私が参加した分科会では大学で行われる様々な調査活動(授業評価や満足度調査等)の結果をどのように学生の授業やカリキュラムに反映させていけば良いのか、各大学からの取り組みを聞くことが出来ました。

FDフォーラム1
今年度の会場は立命館大学 衣笠キャンパスでした

今年度の「FDフォーラム」のテーマは、「大学におけるダイバーシティ」で、初日には「大学に集う人々の多様性にいかに向き合うか」というシンポジウムに参加しました。登壇者の専門性や関心自体が多様性に富み、今回は、人種や多文化、セクシュアリティやLGBT、障がいが主なテーマになり、いずれも様々な人が集う大学では重要なテーマばかりでした。また、多様性を大切にする社会は、少数派だけでなく多数派にとっても生きやすい社会、つまり私たちみんなにとって良い社会になっていくのだというお話しも印象的でした。

FDフォーラム2
登壇者も多様でした!

大学でも多様性を持った学生や教職員が共に過ごしていくわけですが、登壇者のお一人である京都精華大学学長ウスビ・サコ先生の「違いとともに成長する」という言葉が心に残りました。自分が他者との違いを感じた時、これまで出会ったことがない人に出会った時、往々にして不安を感じたり、違和感を持ったりすることもありますが、それは成長する好機とプラスに捉える生き方が出来ると良いなと感じました。
 ちょうど来月の今頃は入学のシーズンです。多様な個性を持った学生さん達と出会えることを楽しみにしたいと思います。
報告者:松島るみ
  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 14:53研究活動

投映法の国際学会に参加してきました!

2017年08月15日

2017年7月17日から21日まで、パリ大学で国際ロールシャッハ及び投映法学会が開催されました。
パリソルボンヌ大学
パリ大学

昨今の世界情勢の中、安全面での心配もありましたが、アジア、欧米、南米、オセアニアなどから多くの参加がありました。
大会開催に先かげて、16日には代表者会議に参加してきました。各国の代表者が投映法の未来についてディスカッションを行いました。

代表者会議の様子
代表者会議の様子

18日には口頭発表(若い共同研究者が発表してくれました)、20日にはポスター発表をしてきました。
口頭発表の様子
口頭発表の様子

ポスター発表ポスター発表

学会では様々な分野のプロフェッショナルと触れ合うことができて、とても刺激的でした。そのプロフェッショナルの一つが通訳の方々です。
国際ロールシャッハ及び投映法学会では、英語、フランス語、スペイン語に加えて日本語も公用語となっています。ですから、特別公演などが行われる一番大きな会場では、日本語の同時通訳が入ります。
同時通訳のある国際大会や国際研修会などに参加されたことのある方は経験されたことがあるかもしれませんが、通訳の日本語がわからない、ということがあります。
国際ロールシャッハ及び投映法学会での英語⇄日本語の同時通訳のお二人は、投映法や心理臨床の知識にも明るく、非常にわかりやすい日本語です。ただ通訳するだけでなく、聴き手のことを考えて、ちょっとしたニュアンスまで伝わるよう全身全霊で訳してくださる姿に高いプロ意識とプライドを感じました。

そして、もうひと方、そのお人柄に触れて感銘を受けた人がいました。初日の代表者会議でのことです。(会議には同時通訳はありませんでした(・・;))その方は、パリ大学を今年定年されるという重鎮の先生です。その先生は決して偉そうにするでもなく、遠くから来た私たちを労い、自ら会場裏のキッチンにたち、コーヒーやジュース、クッキーなどをふるまっておられました。会場の角で小さくなっている日本人にもパンやクッキー(その先生が自ら買ってこられたものだったようで、とても美味しかったです)を持って優しく声をかけて下さるなど、その細やかな心配りに〝人を育てること〟の真髄を見せていただいたような気がしました。

会場では、発表者だけでなくフロアの参加者からもたくさんの意見が出て、あついディスカッションが繰り広げられていました。後から個人的に話すのではなく、人の前で自分の意見や考えを明確に表現できるように(英語で・・・といいたいところですが、まずは日本語で)と強く思いました。

みなさんも様々な体験を通して経験値を上げていって下さい!!

報告者 村松朋子
  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 22:36研究活動
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