現代人間学部 心理学科

#3 「ついやってしまう・・・」行動の理由―セルフコントロールの心理― 

2017年07月31日

はじめに
心理学は「心」を研究対象とする学問ですが、そもそも「心」とは何でしょうか?
わたしたちは「心」というものの存在は何となく信じていますが、それを直接見ることはできません。
では、たとえば「あの人はやさしい心の持ち主だ」と、どういうときに判断するでしょうか。
「電車で席をゆずる」、「相談にのってくれる」、「ノートを貸してくれる」など・・・。
このように考えていくと、わたしたちは、日常の中の具体的な行動を見て、その人の心を判断していることが分かります。このような行動は、直接見ることができます。

行動の原理 
それでは、行動について考えてみましょう。
たとえば、「めがねをかける」理由とは?
「目が悪いから」「黒板が見えにくいから」と考えがちですが、実はこれらは「めがねをかける」行動のきっかけにすぎません。
行動の理由を考えるときに重要なことは、「その行動をした後に、どのような変化が起きるか」という視点です。「よく見えない」ときに「めがねをかける」と「よく見える」という行動の前後の状況の変化こそが、行動の理由となります(杉山,2005)。

行動随伴性スライド
 「めがねをかける」理由をABC分析 (模擬授業のスライドより)

「つい…してしまう」行動
「つい…してしまう」行動がくり返されるとき、どうすれば良いか、行動の原理に基づいて考えてみましょう。
 1. ABCの3つの箱に入れて分析
 2. 気づいていなかったプラスの変化を見つける
 3. 自分が本当にやりたい行動が起こりやすい環境を作る
 4. やりたい行動の後にプラスの変化を!

「つい…してしまう」行動の背景
「つい…してしまう」行動は、心理学において、「セルフコントロール」と「衝動性」という枠組みで研究されています。
たとえば、大切なテストの前日、少し面白そうなテレビ番組が始まった場面を考えてみましょう。テレビを消して、勉強を始めれば、テストでの良い結果につながります。将来の大きな喜びのために、目の前の小さな喜びをがまんするこの行動は「セルフコントロール」と呼ばれます。
一方、そのままテレビを見てしまうと、その時は楽しいかもしれませんが、翌日のテストの結果は良くないでしょう。この行動は、「衝動性」と呼ばれます。たとえどんなに大きな喜びであっても、それがすぐには得られないとき、その喜びのために何かをがまんしながら、その喜びにつながる行動をしつづけることは、とても難しいことなのです。

授業風景
子どものセルフコントロールについて調べる実験を紹介


セルフコントロールの心理学:教育・医療・矯正への応用
現在、心理学の分野では、行動の原理に基づいて、「セルフコントロールはどのように発達するのか」、「どのようにすればセルフコントロールが可能になるのか」という研究が活発に行われています。近年、この研究成果は、教育、医療、福祉、矯正の分野でも応用されています。
詳細については、6月に出版されたばかりの以下の本を読んでみてください。

書籍紹介
セルフコントロールの教育、勉強行動、ダイエット、糖尿病、慢性疾患、薬物依存、犯罪心理など、
セルフコントロール研究の最先端がまとめられた1冊


まとめ
「つい…してしまう」行動の理由を、「だって、意志が弱いから」「だって、そういう性格だから」と 内面の問題として説明しないこと が大切です。行動の原理に注目して、1つ1つの行動を客観的に理解してみましょう。
心理学とは、人間や動物の様々な行動を、観察や実験という科学的方法を用いて研究する分野です。心理学の中でも特に、「行動の原理」に注目して、人間や動物の行動の理解するための研究を行う分野は、「学習心理学」や「行動分析学」と呼ばれます。「行動の原理」を、心理的援助や、医療場面の治療などに役立てる分野は「臨床心理学」と呼ばれます。

--- おすすめの本 ---
①「行動分析学入門:ヒトの行動の思いがけない理由」(2005)杉山尚子(著)集英社新書
*行動分析学について分かりやすく解説(初級編)。本日の授業の前半で取り上げました。

②「セルフ・コントロールの心理学:自己制御の基礎と教育・医療・矯正への応用」(2017)高橋雅治(編著)北大路書房
*本日の授業の後半で取り上げました(中級編)。

③「現代心理学:行動から見る心の探求」(2013)伊藤正人(編著)昭和堂
*まずはコラムを読んでみましょう。大学の心理学の教科書(初級編)。本日の模擬授業についてもっと詳しく知りたい人におすすめ。


  報告: 空間 美智子 (2017/7/16 OC模擬授業より)  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 10:07さいころ講座

「認知症サポーター養成講座」を実施しました

2017年07月10日

2017年6月21日(水)の5講時、本学にて「認知症サポーター養成講座」を実施しました。

「認知症サポーター養成講座」とは、超高齢化社会の中で認知症当事者と家族への応援者である認知症サポーターを養成して、認知症になっても安心して暮らせる町づくりを目指すもので、全国的に「認知症キャラバン」として展開されています。
本学のある下鴨学区では、左京北地域包括支援センターが中心となり各所で開講しており、この度は本学現代人間学部と共催で、本学学生や近隣の方々向けに実施することとなりました。

当日の参加者は、本学学生27名、教職員2名、地域の方1名の計30名でした。
包括支援センターと関連の福祉機関スタッフの方々6名が来られ、認知症の社会的現状、DVD視聴、医学的説明、デイサービスでの実地のお話などをいただきました。

認知症サポーター1
山本センター長からのお話

そのあとグループに分かれ、認知症に対する不安や疑問、感想を共有しました。

認知症サポーター2
グループでの話も活発でした

心理学科からも高齢者の心理を学んでいる学生を中心に参加があり、また家族に認知症当事者を抱えている学生も多々見受けられ、グループでも全体の振り返りでも活発な発言がありました。その中で「徘徊かな・・・と思っても、実際には声かけを躊躇してしまうし、タイミングも方法も難しい」という質問があり、包括センターの山本センター長から具体的なアドバイスとともに、声かけのポイントを示したリーフレットをいただきました。



積極的な質問も

本講座は、現代人間学部の「人と暮らしを支える」というコンセプトともつながります。そして、学生たちにとっては認知症についての啓発というだけでなく、複数の職員の方々からお話をいただいたことで、高齢者福祉の現場で生き生きと働くキャリアモデルに触れる貴重な機会にもなりました。
今後は毎年定例として、初夏の時期に開催を予定しています。

報告:伊藤 一美







  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 17:09イベント学生の様子

新学部開設記念講演会

2017年07月05日

6月11日(日)、本学アリーナにて現代人間学部開設記念講演会を開催し、約270名の方が来場されました。
第1部では、昭和女子大学総長・理事長の坂東真理子先生をお招きし、「女性の教育とキャリア」というテーマでご講演いただきました。社会の変容や女性の労働状況の変化と現状、これからの社会で求められる力や女性が自立する上で必要な力などについて、テンポのよい語り口で、分かりやすく説明して下さりました。
また、こうした力は、現場での多様な経験を通して培われるため、大学の教育機能も改めてパワーアップしていくことが必要であるとのお話でした。

新学部記念講演会1
坂東真理子先生のご講演

第2部では、本学の卒業生3名(役場職員、少年鑑別所法務技官、幼稚園教諭)が「大学での学びと現在のキャリア」について発表し、坂東先生と意見交換会を行いました。
心理学科からは、本学心理学研究科臨床心理学専攻を修了された松倉康子さんに発表して頂きました。
松倉さんは、臨床心理士でもあり、現在は、名古屋少年鑑別所に法務技官として勤務しておられます。ご自身がどのようにして進路選択を行って来られたかということや、少年鑑別所でのお仕事についてもお伺いすることができ、高校生や大学生にとっては、これからの人生を考えるよきモデルとなったことと思います。
坂東先生からも、それぞれの卒業生が、仕事を通して成長を感じられる職場にいるということがとても貴重なことであり、これからもその仕事を大切に続けてほしいというエールを頂きました。

新学部記念講演会2

新学部記念講演会3
卒業生との意見交換会 

それぞれの場で活躍されている卒業生たちの成長した姿に胸が熱くなりながら、在学生たちも、彼女たちのように大学生活の中で豊かな経験を重ね、これからの社会で活躍できる力を身に着けられるように、と日々の授業や学生とのかかわり方を改めて考えさせられた一日でした。  
                                         
報告:図書館・情報センター委員
  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 17:02イベント
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