現代人間学部 心理学科

#1  恋心の心理学― 対人魅力を科学する ―

2017年05月03日

春は出会いと別れの季節
新年度がスタートしてほぼ1か月。
この出会いと別れの季節に、恋に落ちた人、まだ恋とは言えないかもしれないけれど「何となく好き…」「ちょっと気になるかも?」という相手に出会った人もいるでしょう。あるいは、恋人関係が何らかの理由で壊れてしまった人もいるかもしれません。
4月23日の模擬授業「恋心の心理学 ―対人魅力を科学する-」では、私たちにとって身近な経験である“恋愛”をテーマに選び、会場の皆さんと一緒に学び、考えてみました。

“恋心”を心理学から考える 
心理学は人の心(心理現象)を研究する学問ですが、“恋愛”も人間の心理現象の一つです。恋愛に関連する事柄を思いつくまま挙げてみても“好き”“嫌い”“幸福”“嫉妬”“裏切り”“性格”“相性”“劣等感”等々、たくさんの語が浮かびますが、いずれも心理学の研究対象となるものです。
恋愛をはじめ、心理学の研究対象となる事柄は、日常的で多くの人が経験するので、私たちは何となく「分かったつもり」でいます。でも、実はあまり「よく分かっていない」「間違っている」「偏っている」かもしれません。

今回の模擬授業では、まず参加者の皆さんに“恋”の色や形について尋ねてみました。

恋の形?
 「恋」をお題に、参加者が思い思いに描いてみました

いろいろな回答が寄せられたのですが、そもそも“恋”には色や形はありませんよね?!
でも、私たちは“恋”について様々なイメージを持っていますので、問われれば、そのイメージを表現することもできます。そして、個々人が表現したものをデータとして分析すれば、例えば「恋のイメージの研究」等もできるかもしれません。

このように心理学では、目に見えない(実体がない)心理現象について、考え・データを収集し・収集したデータをもとに人間について研究して行きます。


恋愛の研究 ―恋愛と好意は違うのか?―
実体のない心理現象について、いろいろな研究の切り口(視点)が考えられますが、“恋愛”についても、これまで様々な研究がなされています。

20170423模擬授業1
 心理学のさまざまな恋愛の理論を紹介

模擬授業では3つの研究について紹介しましたが、ここではその中から一つを紹介します。
この文章の最初の部分で、「恋に落ちた」と「何となく好き…」の例を挙げました。皆さんは“恋”と“好き”は違うと思いますか?違うとすれば、どこがどのように違うのでしょうか?そして、両者の違いは実証されているのでしょうか?ルビン(Rubin, Z., 1970)(※1)という研究者は、恋愛(loving)と好意(liking)は異なると考えました(図1)。
図1(模擬授業)
 図1(模擬授業のスライドより)

そして、ルビンは自身の考えを検証するため、測定道具(複数の質問項目からなる尺度)を開発し、その尺度を使ってデータを集めて分析しました。結果、
①恋人が対象の場合には、恋愛と好意の得点の両方が高く、友人が対象の場合には好意の得点だけが高い(恋愛の得点は低い)こと、
②男女で違いがあり、男性は女性よりも両得点の関連が高い(女性は男性よりも両得点の関連が低い)こと、
が分かりました。

①の結果から、人は恋愛と好意を異なったものとして体験・認識している、
②の結果から、男性は女性に比べて恋人と友人とを厳密に区別していない、
と言えそうです。

ルビンの研究は1970年にアメリカの心理学雑誌に掲載されたものですが、現代の日本ではどうでしょうか。
また、この研究は「男女の間で友情は成立するか?」という問いにも発展しそうです。皆さんはどのように考え、どのような方法で確かめることができると思いますか?

情報の海で溺れないために
情報が溢れる現代、恋愛についても様々な情報を瞬時に、また大量に得ることができます。ためしに今、グーグルで“恋愛”と入力して検索すると、僅か0.49秒で2億2,500万件がヒットしました。
自らの問いや悩みを「早く」「楽に」解決しようとすると、どうしても物事を単純かつ固定的に捉えしまいがちです。そして、単純で固定的な考え方や見方(ステレオタイプ)は、往々にして否定的な感情と結びつきやすい(偏見となる)と言われています。“恋愛下手なのは…”“男性の愛は女性の愛よりも…”“同性愛は…”等々、いろいろな言葉が続きそうです。

溢れる情報の海で溺れないために、皆さんはまず「本当かな?」と疑ってみて、そして自分で「確かめて」みて下さい。心理学を学ぶことを通じて、情報の海に溺れないためのお手伝いができると思います。“恋愛”についても、もっと深く考え、確かめてみませんか?
“心の学問の場にようこそ!

 報告:向山 泰代 (2017/4/23 OC模擬授業より)

※1)Rubin, Z. 1970 Measurement of romantic love. Journal of Personality and Social Psychology, 16, 265-273.




Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 04:34│さいころ講座

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