現代人間学部 心理学科

#8 錯覚からわかる心のメカニズム

2018年05月01日

私たちは、通常、周りにある物事をありのままに受け取っていると思ってるのではないでしょうか。ところが、実際とは異なるように物事をみてしまうこともあります。これを錯覚といいます。錯覚とは、対象の客観的な性質と異なって知覚が生じることです。物差しで測ると同じ長さであるのに見た目は違う長さに見えたり、同じ味であるのに色が違うとおいしく感じられたりするのは、錯覚の例です。

錯覚1
同じ長さなのはc


錯覚はなぜ起きるのでしょうか。
錯覚には、私たちの周囲の環境が原因となり引き起される場合があります。例えば、晴れた暑い日にアスファルトの道路上に水があるように見える「逃げ水」や、地上や水上の物が浮き上がって見える「蜃気楼」などの現象があります。これらは、光の屈折など物理的な要因によって起こる錯覚なので、物理的錯覚と呼ばれます。

錯覚が起こるもう一つの原因は、私たちの側にあります。私たちが周りの環境をとらえる知覚のメカニズムにその原因がある場合です。私たちは環境にある光や空気の振動を目や耳などの感覚器官から取り入れ、物事を知覚しています。感覚器官に与えられる物理的な刺激は問題なくても、その後の心理的なメカニズムがうまく機能していないために錯覚が生じることがあります。これらは、心理的な要因であるので心理的錯覚と呼ばれます。

錯覚2
左右のドーナツ部分は同じ明るさ

心理的な錯覚が生じるということは、私たちの知覚がその与えられた条件ではうまく機能していないということを表しています。したがって、どのような条件のときに錯覚が生じ、どのような条件のときに錯覚が生じないかを調べることで、私たちの知覚の機能を知ることができます。

錯覚以外でも、知覚がうまく機能しない場合があります。それは脳に損傷を受けた場合などです。例えば、視力は正常で見た物を描くことができる、だがそれが何かわからない、しかし手で触ると何かわかる、というように、ある特定の視覚に対する反応にだけ困難を示す事例があります。こうした事例を調べていくことは、知覚がどう機能しているかを知る手がかりになります。

このように、錯覚や知覚の障害など知覚がうまく機能していない状態を詳しく調べていくことで、私たちの知覚のメカニズム、ひいては心のメカニズムを知ることができるのです。

報告者:廣瀬直哉



Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 19:03│さいころ講座

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