#15 失敗の心理学 ―思わずしてしまうエラーの心理―

京都ノートルダム女子大学心理学科

2021年07月29日 16:18

私たちは日々の生活の中で、しばしば失敗をします。そうした失敗は私たちの心の働きとどのように関連しているのでしょうか。

失敗の心理的なメカニズムを研究する分野として、ヒューマンエラーの研究があります。
それらの研究によると、ヒューマンエラーは、ミステイク(mistake)、ラプス(lapse)、スリップ(slip)の3つに分類されます。



表 ヒューマンエラーの種類




ミステイクは計画段階でのエラーで、事前に実行の手順を考えたりする時に間違うことです。例えば、最初に考えたとおりに行ったが、時間の計算ミスをしていたため、間に合わなくなってしまったような場合です。ラプスは記憶段階でのエラーで、何かを実行する前に記憶が不確かになることです。例えば、冷蔵庫の扉を開けてから「あれ、いま何を取るのだっけ」と思い出せなくなるような場合です。

スリップは、自分の意図とは異なる行為を思わず行ってしまうエラーです。例えば,個包装されたお菓子を食べようと思って包みを開けたが、包みでなく中身の方をゴミ箱に捨ててしまったような場合です。また、言い間違いも英語で“slip of the tongue”と言われ、スリップの一種です。スリップが起こると、私たちはしばしばびっくりします。それは、自分がやろうと意図していたことと違うことを行ってしまい、そのズレに気づくからです。

日々の生活の中で、スリップに出会うことはそんなに多くありません。しかしながら、簡単な実験で体験することができます。それは「急速反復書字」と呼ばれる実験で、紙と鉛筆を用意して、特定の文字をできるだけ早くたくさん書き続けるだけのものです。平仮名の「お」、漢字の「大」「類」などにおいて、別の文字を書いてしまう書字スリップがしばしば生じるとされています。
ぜひ、みなさんも実際に行って、スリップを体験してみてください。





図 「お」の急速反復書字を行った例



報告:廣瀬 直哉 (2021/5/2 OC模擬授業より)

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