#13 勉強に役立つ心理学

京都ノートルダム女子大学心理学科

2019年05月06日 05:52

高校生や大学生の皆さんにとって,「限られた時間でどのように効果的に勉強を進めていけば良いか」は大きな関心事の一つだと思います。心理学の分野では,効果的に勉強を進めるという方法を「学習方略」と呼びます。

皆さんは日頃,どの様に勉強に取り組んでおられるでしょうか?
「勉強量が一番」「正解することが大事」「わからないことは,とりあえず丸暗記すれば良い」と考えている方も多いかもしれません。
しかし,学習量の多さや丸暗記だけを重視していてはなかなか学習成果に結びつきにくく,しっかり学習内容の意味を理解したり,学習方法の工夫を大切にする発想が大切と言えます。


まずは各自の「勉強への考え方」をチェック

模擬授業では,簡単な記憶テストを行いながら,実際に異なる学習方略を体験してもらいました。
具体的には,20個の単語を「表面的な浅い処理をするように教示する場合(物理的処理)」,「意味的で深い処理をするように教示する場合(意味的処理)」の2パターンで,それぞれ10個ずつ覚えてもらいました。
過去の研究では,同じ様な単語であっても,その単語に対する処理の深さによって再生の程度に差がみられ,意味的で深い処理を行う方がより正答率が高くなることが明らかになっています。


記憶には水準の異なる方法がある

例えば,英語の授業で英単語を覚える際,「物理的処理」であれば,単語をそのまま丸暗記するという学習になりますが,「意味的処理」であれば,その英単語を含んだ英文を覚えるなど,英単語の英文での使用方法を理解したり,あるいはその単語の語源や同意語・反意語も併せて覚える等の学習方法が考えられます。
また,歴史の授業であれば,単に歴史的な出来事と年号をそのまま丸暗記するのではなく,その出来事が起こった背景なぜその様なことが起こったのかを考えて覚える必要があります。

このように,意味を理解しながら深い学習を行う場合と深い学習を行わなかった場合とでは,学業成果にも差がみられ,前者の方が成績が良いことも明らかになっています(例えば,村山,2003)。

皆さんはこれから受験勉強,大学での授業や資格試験等,勉強をする場面がたくさんあると思います。
理解出来ない様な困難な学習内容に直面した場合,意味を理解する深い学習方法を行うことも難しく感じる場合がありますが,その場合はまず浅い処理の学習方法を行って,その後深い処理の学習方法を行うという方法をとることも可能です。
学習内容や難易度によって,2つの学習方法を柔軟に使い分け,より効果的な勉強が出来る学習者を目指して下さい。

     報告: 松島 るみ((2019/4/28 OC模擬授業より)

参考) Craik, F.I.M., & Lockhart, R.S. 1972 Levels of processing: A framework for memory research. Journal of Verbal Learning and Verbal Behavior, 11, 671-684.
    村山航 2003 テスト形式が学習方略に与える影響 教育心理学研究,51,1-12.


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