現代人間学部 心理学科

2024年度 総合型入試 【標準型】 課題レポート情報

2023年06月11日

2024年度 総合型入試【標準型】課題レポートについての情報です

2024年度入試において心理学科を志望し、総合型入試の【標準型】で受験する方は、以下の11のコンテンツから1つを選んで、課題レポートを作成してください。

◎ 本ブログ「さいころ講座」内コンテンツ
(文章で書かれたコラムです)


・恋心の心理学― 対人魅力を科学する ―

・勉強に役立つ暗記術とは? ― 記憶の心理 ―

・子どものやる気と自信を育てるには? ― 親と子の発達心理 ―

・「わたし」を分析する ―長所?短所?見方を変えてみれば―

◎ 本学心理学科ミニ動画のコンテンツ
(音声付きスライド10分程度)


・他者との関係《深く?浅く?》―自己開示と対人関係―

・まわりに合わせる心理

・ジェンダーとステレオタイプの心理学

・カウンセリングではおはなしするだけなの? -言葉を使わないで自分を表現すること-

◎ 本学心理学科教員による「夢ナビ」講義ビデオ
(講義の動画 20~30分程度)


・なぜ人は衝動買いをしてしまうのか?

・日常語から、性格について考える

・男性/女性って簡単に分けられない心の世界


※ 総合型入試の詳細は、本学HP「受験生応援サイト>入試情報」の「総合型入試をご覧ください。

  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 09:00さいころ講座

「さいころ講座」オープンしています!

2022年06月21日



心理学って何を学ぶの?
そんな疑問を持っている皆さんへ、心理学の幅広いテーマを体験してみてください。
これまでの歴代のオープンキャンパス模擬授業をブログでお届けしています。

2023年度入試で心理学科を志望する受験生の方へ
2023年度総合型入試【標準型】課題レポートについての情報は、こちらをご覧ください。


***********さいころ講座 ラインナップ***************
下の講座ラインナップから読みたい「#タイトル」をクリック!

タイトルが出てこない場合は、こちらに入って、下へスワイプ/スクロール してください⇩⇩

#1 恋心の心理学― 対人魅力を科学する ―

#2 勉強に役立つ暗記術とは? ― 記憶の心理 ―

#3 「ついやってしまう・・・」行動の理由― セルフコントロールの心理 ―

#4 子どものやる気と自信を育てるには? ― 親と子の発達心理 ―

#5 こころのかたちは? ― 心理カウンセリングを体験する ―

#6 性格テストを解剖する ― 心理テスト入門 ―

#7 人の印象は何によって決まる?― 対人関係の心理学 ―

#8 錯覚からわかる心のメカニズム

#9 よき聴き手とは?―心理カウンセリング入門―

#10  「ついやってしまう・・・」行動の解決法 ―行動分析学への招待―

#11 きって、はって、心を表現する ―コラージュ療法を体験しよう―

#12 「わたし」を分析する ―長所?短所?見方を変えてみれば―

#13 勉強に役立つ心理学

#14 親と子を結ぶ『愛』という絆

#15 失敗の心理学 ―思わずしてしまうエラーの心理―

#16 意識と無意識とマンダラぬり絵

この後の講座もご期待ください。  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 09:00学科のトピックさいころ講座

#16 意識と無意識とマンダラぬり絵

2021年08月04日

みなさんは、「マンダラ」という言葉を聞いたことがありますか?
「マンダラ」とは「本質を有するもの」という意味を持ちます。
また、真言密教という宗教でも、大切な意味を持って存在しています。

真言密教では、マンダラは「曼荼羅」と漢字で書かれます。真言密教とは、平安時代の高僧である空海が高野山で開祖した宗教です。高野山金剛峰寺では、真言密教における曼荼羅図が公開されています。

さて、このマンダラと意識と無意識にはどのような関係があるのでしょうか。

心理学において、フロイト(1856-1939)は「無意識」という概念を発見しました。こころの病気を治療しているうちに、患者さんの意識とは関係ないところでこころが動いている、そしてそれが患者さんの行動に影響を与えていると考えました。フロイトの弟子であったユング(1875-1961)は、フロイトの「無意識」概念に影響を受け、無意識にはさらに二つの領域があると考えました。さらに、東洋の思想にも影響を受け、東洋人の意識と西洋人の意識が異なるのではないかと考え、それぞれの意識の在り方について研究しました。
また、密教における曼荼羅についても興味を持ちました。それは、ユング自身が時折描いていた絵が曼荼羅に似ていたからだと言われています。





今回、お示ししているマンダラぬり絵は、私がPC上で作成し色付けしたものです。上下左右がほぼ対称となるように作りました。マンダラぬり絵には、とてもたくさんのパターンがあり、インターネット上でも無料で公開されているものが少なくありません。

実際のマンダラぬり絵は、お好きなパターンを選んで色を塗っていただくのですが、パターンや色を選ぶ部分は「意識」が強く作用します。どの色を選ぼうかなぁと考えるのは、意識の仕事です。集中してぬり絵を行っていると、「無意識」の部分が元気になり(活性化するとも言います)、ふと、思い出しもしなかった記憶がよみがえってきたりします。それはもしかしたら、思い出すのを避けていたことかもしれません。あるいは、思い出すと楽しくなって思わず微笑んでしまうことかもしれません。どれもとても大切な記憶です。無意識からのメッセージです。
そして、集中して塗っていると完成した時の達成感が非常に大きいです。学生さんと一緒に授業でマンダラぬり絵をしていると、学生さんから「やったぁ」「できたぁ」という喜びの声も多く聞かれます。できあがったマンダラぬり絵を見る達成感によって、こころがリフレッシュしたり、元気になったりします。

みなさんも、意識中心の生活から少し離れて、無意識を元気にさせるマンダラぬり絵を体験してみませんか。


参考文献
頼富本宏 2005 密教と曼荼羅 世界文化社
河合隼雄 1967 ユング心理学入門 培風館


報告:佐藤 睦子(2021/7/13 OCミニ講義より)  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 12:29さいころ講座

#15 失敗の心理学 ―思わずしてしまうエラーの心理―

2021年07月29日

私たちは日々の生活の中で、しばしば失敗をします。そうした失敗は私たちの心の働きとどのように関連しているのでしょうか。

失敗の心理的なメカニズムを研究する分野として、ヒューマンエラーの研究があります。
それらの研究によると、ヒューマンエラーは、ミステイク(mistake)、ラプス(lapse)、スリップ(slip)の3つに分類されます。



表 ヒューマンエラーの種類




ミステイクは計画段階でのエラーで、事前に実行の手順を考えたりする時に間違うことです。例えば、最初に考えたとおりに行ったが、時間の計算ミスをしていたため、間に合わなくなってしまったような場合です。ラプスは記憶段階でのエラーで、何かを実行する前に記憶が不確かになることです。例えば、冷蔵庫の扉を開けてから「あれ、いま何を取るのだっけ」と思い出せなくなるような場合です。

スリップは、自分の意図とは異なる行為を思わず行ってしまうエラーです。例えば,個包装されたお菓子を食べようと思って包みを開けたが、包みでなく中身の方をゴミ箱に捨ててしまったような場合です。また、言い間違いも英語で“slip of the tongue”と言われ、スリップの一種です。スリップが起こると、私たちはしばしばびっくりします。それは、自分がやろうと意図していたことと違うことを行ってしまい、そのズレに気づくからです。

日々の生活の中で、スリップに出会うことはそんなに多くありません。しかしながら、簡単な実験で体験することができます。それは「急速反復書字」と呼ばれる実験で、紙と鉛筆を用意して、特定の文字をできるだけ早くたくさん書き続けるだけのものです。平仮名の「お」、漢字の「大」「類」などにおいて、別の文字を書いてしまう書字スリップがしばしば生じるとされています。
ぜひ、みなさんも実際に行って、スリップを体験してみてください。





図 「お」の急速反復書字を行った例



報告:廣瀬 直哉 (2021/5/2 OC模擬授業より)  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 16:18さいころ講座

#14 親と子を結ぶ『愛』という絆

2019年09月07日

最近、メディアでは子育てにまつわるトピックスが増えています。
今や母親だけでなく、父親も育児をすることが当たり前と考えられるようになりつつあり、「イクメン」などという言葉もよく見聞きしますね(しかし、まだまだお父さんたちが育児休暇を取得するには、社会的障壁は高そうですが・・・)。

一方で、保育所になかなか入れない待機児童問題、親の養育を十分に受けられず虐待を受けている子の数が増加していることなど、心が痛むニュースも多いですね。
虐待の問題は、命にかかわる事態に至ることもありますし、そうでなくても不適切な育児環境に置かれている子どもは、精神発達の遅れやその後の学習の問題、児童期・青年期以降の精神疾患などにも影響するという報告があります。

このような問題から、幼少期の親子関係を安定して育むには、親にも子にも手助けが要るということが想像できます。


子どもは、ただ栄養を与えられるだけで大きくなるのではなく、大切な人(親など)との親密な信頼関係に基づく「心の絆」を育みながら、それを基盤にして周りの人や物と関係を広げ、心身が成長発達します。
幼い赤ちゃんの頃は、ただ受け身の存在であって、周りの大人からお世話されるだけの存在のように思うかもしれませんが、実は、赤ちゃんなりにいろいろな行動をしています。泣いたり、笑ったり、しがみついたりすることは、大人が赤ちゃんをいとおしく思うきっかけになりますし、大人が反応してくれないと、子どもの方から大人に声をかけるなど働きかける姿が観察されます。

では、大人はどうでしょうか。
親になれば「親スイッチ」が自動的に入って、子どもを愛おしみ育てることができて当たり前、と思うかもしれません。
でも、それは少し違うようです。
女性であっても「生まれながらに幼子に愛情を注げる」というわけではありません。出産や授乳を経験することによって生理的な変化が生じ、また育児を経験することによって、子どもの泣き声や行動に敏感に反応するようになります。
「育児経験」については、親になったことのない青年や男性においても敏感になるという、実験結果がみられています<(佐々木他,2010)など>。

つまり、親子の相互作用によって心の絆が育まれていくのです。

心理学では「愛着(アタッチメント)」といわれる、この心の絆があることで、子どもたちは「安全・安心」を感じながら、新しい場面、遊び、友達と緊張しながらも活動をひろげ、いろいろなことを体験・発見し、興味をもって自らチャレンジすることができるようになります。
それが精神発達の源になっていきます。



もちろん、子ども自身の性質(引っ込み思案、変化に敏感、馴染むのに時間がかかる、活発などなど)によっても異なりますし、それに合わせて即座に応答してあげられる親もいれば、子どもの様子に合わせるのが苦手な親もいます。
先に述べたように、大人も育児を経験しながら「親」になっていきます。時には、いろいろな事情が重なり、不幸にも不適切な養育に陥ることがあります。
今の日本は、周りに子育てを手伝ってくれる人がいなかったり、夫婦ともに仕事を持っていたり、少子化という環境の中、子どもへの接触経験が少なく、子育てのイメージを十分に持てないまま育児を始めることになる人もいたり、子育てには厳しい社会構造になりつつあります。

近年の愛着研究からは、親だけでなく信頼できる大人との関係が幼少期から学童期に育まれることで、将来の精神的発達の問題は予防、また回復の可能性があるといわれています。
親戚、先生、友人、地域の人々など、いろいろな人が関わり子育てをサポートできる環境づくりも、子どもとの「愛」という絆を育む機会につながるのではないでしょうか。

社会の一員として、みなさんも一緒に考えてくださるといいなと思っています。


報告:薦田 未央(2019/7/14 OC模擬授業より)  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 06:04さいころ講座

#13 勉強に役立つ心理学

2019年05月06日

高校生や大学生の皆さんにとって,「限られた時間でどのように効果的に勉強を進めていけば良いか」は大きな関心事の一つだと思います。心理学の分野では,効果的に勉強を進めるという方法を「学習方略」と呼びます。

皆さんは日頃,どの様に勉強に取り組んでおられるでしょうか?
「勉強量が一番」「正解することが大事」「わからないことは,とりあえず丸暗記すれば良い」と考えている方も多いかもしれません。
しかし,学習量の多さや丸暗記だけを重視していてはなかなか学習成果に結びつきにくく,しっかり学習内容の意味を理解したり,学習方法の工夫を大切にする発想が大切と言えます。


まずは各自の「勉強への考え方」をチェック

模擬授業では,簡単な記憶テストを行いながら,実際に異なる学習方略を体験してもらいました。
具体的には,20個の単語を「表面的な浅い処理をするように教示する場合(物理的処理)」,「意味的で深い処理をするように教示する場合(意味的処理)」の2パターンで,それぞれ10個ずつ覚えてもらいました。
過去の研究では,同じ様な単語であっても,その単語に対する処理の深さによって再生の程度に差がみられ,意味的で深い処理を行う方がより正答率が高くなることが明らかになっています。


記憶には水準の異なる方法がある

例えば,英語の授業で英単語を覚える際,「物理的処理」であれば,単語をそのまま丸暗記するという学習になりますが,「意味的処理」であれば,その英単語を含んだ英文を覚えるなど,英単語の英文での使用方法を理解したり,あるいはその単語の語源や同意語・反意語も併せて覚える等の学習方法が考えられます。
また,歴史の授業であれば,単に歴史的な出来事と年号をそのまま丸暗記するのではなく,その出来事が起こった背景なぜその様なことが起こったのかを考えて覚える必要があります。

このように,意味を理解しながら深い学習を行う場合と深い学習を行わなかった場合とでは,学業成果にも差がみられ,前者の方が成績が良いことも明らかになっています(例えば,村山,2003)。

皆さんはこれから受験勉強,大学での授業や資格試験等,勉強をする場面がたくさんあると思います。
理解出来ない様な困難な学習内容に直面した場合,意味を理解する深い学習方法を行うことも難しく感じる場合がありますが,その場合はまず浅い処理の学習方法を行って,その後深い処理の学習方法を行うという方法をとることも可能です。
学習内容や難易度によって,2つの学習方法を柔軟に使い分け,より効果的な勉強が出来る学習者を目指して下さい。

     報告: 松島 るみ((2019/4/28 OC模擬授業より)

参考) Craik, F.I.M., & Lockhart, R.S. 1972 Levels of processing: A framework for memory research. Journal of Verbal Learning and Verbal Behavior, 11, 671-684.
    村山航 2003 テスト形式が学習方略に与える影響 教育心理学研究,51,1-12.

  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 05:52さいころ講座

#12 「わたし」を分析する ―長所?短所?見方を変えてみれば―

2019年04月23日

自分について考えた時、短所は思い浮かぶけれど、長所がなかなか見つけられないということはありませんか?
高校生の時期は、心身の変化だけでなく、人間関係や環境の変化も大きく、不安や戸惑いを感じやすい時期です。
また、自分に対する見方も揺らぎがちで、
「あの子は〇〇なのに、私はどうして✕✕なんだろう」
「もっと△△な自分になれたらいいのに」

と、他の人と比べたり、理想とは違う自分を意識したりして、自分への評価が否定的になることも多いのではないでしょうか。

授業では、実際に自分の長所と短所を考えてみてもらいました。
長所も短所もすぐに思い浮かんだ人、短所は見つかったものの長所が思い浮かばす手が止まる人、さまざまでしたが、長所よりも短所の方が思い浮かびやすいという人が多く見受けられました。

次に、いくつかの多義図形を見てもらいました。




着目するところが違うと、見え方が異なることを実感してもらった後、リフレーミングについて紹介しました。
リフレーミングとは、枠組みを再構築するという意味です。
「他にどのような状況で役に立つのか?」という視点から物事を捉えていく状況のリフレーミングと「他にどのような意味があるのか?」という視点から物事を捉えていく意味のリフレーミングについて説明しました。

その後、具体例を使って、リフレーミングの練習をしてみました。




“頑固でこだわりの強いAさん”について、どのように見方を変えることができるでしょうか?
――
「自分の世界をもっている」
「自分の意見をしっかりもてている」
「粘り強く物事に取り組むことができる」

などなど。

短時間での説明だったにも関わらず、皆さんとても積極的に取り組んでくださり、うまくリフレーミングされていたことに驚きました。
最後に、授業の前半に書いてもらった自分自身の短所についても、リフレーミングをしてみました。

今回の授業では、短所の見方を変えるワークをしましたが、自分を否定的に見ることは、必ずしも悪いことではありません。
少し立ち止まって悩む時間が必要な時もあるでしょうし、自分に足りない点に気づくことがその後の成長につながることもあります。

授業で紹介したことが、受講生の皆さんの何らかの気づきに役立てれば嬉しく思います。

   報告:尾崎 仁美 (2019/3/24 OC模擬授業より)


  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 18:44さいころ講座

#11 きって、はって、心を表現する-コラージュ療法を体験しよう-

2018年08月08日

コラージュ療法について
-言葉以外の方法で自分を表現すること-

1.コラージュとは
みなさんは、コラージュと言う言葉を聞いたことがありますか?
全然、聞いたことがない方、高校の美術の授業でやったことがある方、コラージュとは思っていなかったけど、切ったり貼ったりすることが好きな方…。いろんな方がおられるかと思います。実は、どのようなやり方が正式なコラージュとは決まっていないのです。
決まっていないから、自由な発想で切ったり貼ったりすることを楽しめるとも言えるでしょう。

さて、今回は、カウンセリングにおける一つの技法として「コラージュ療法」についてお話したいと思っています。

コラージュ

2.芸術療法の中のコラージュ
カウンセリングでは、来談者さんがカウンセラーに悩みごとを話して、それをカウンセラーとともに解決していく、というのが一般に考えられている方法です。
しかし、子どもや悩みの深い人、言葉にできるエネルギーの乏しくなった人にとっては、言葉での自己表現がとても難しいことがあります。そのような時にひとつの方法として「芸術療法」が取り入れられます。

有名なものに箱庭療法があります。
本学オープンキャンパスでも模擬体験できますが、実際のカウンセリング場面でもよく使われます。横72cm×縦57cm×深さ7cm の四角形の内側を水色に塗った箱に砂を入れ、その上にミニチュア玩具を並べていきます。
カウンセリングの中で何度か箱庭を置いてもらって、来談者さんの変化を感じ取ったり、カウンセラーの解釈を一緒に味わったりします。

芸術療法には、他にも絵画療法、音楽療法、心理劇、ダンスセラピー、詩歌療法、造形療法などがあります。いずれにおいても、自分のこころの表現を言葉以外の方法を用いて行います。言葉以外の方法は、とても興味深く面白いのですが、どのようにカウンセラーが捉えていくかについて、様々な議論が加えられ開発されてきています。
材料として使用してもかまわない古雑誌などを集めて、そこから自分のイメージに合ったものを切り取って、画用紙に貼っていく「マガジンピクチャー法」と、カウンセラーが材料を切って準備する「コラージュボックス法」という2つの方法が主に臨床場面では採用されています。
また、持ち運べるという利便性によって、医療場面においては病棟のベッドサイド、教育場面においては学校での別室など、幅広い現場でコラージュ療法が行われています。

本学では、3年次生の実習授業でコラージュ療法の「マガジンピクチャー法」を実際に体験することができます。
また、他の芸術療法も体験できるカリキュラムも準備されています。是非、みなさんと一緒に楽しみながら学んでいきたいと思っています。

参考文献:森谷寛之(2012) コラージュ療法実践の手引き 金剛出版

報告:佐藤睦子
  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 16:13さいころ講座

#10 「ついやってしまう・・・」行動の解決法 ―行動分析学への招待―

2018年07月02日

はじめに
こころは だれにも見えない
けれど こころづかい は見えるのだ
それは 人に対する積極的な行為だから
          (「行為の意味」宮澤章二より)

 心理学は「心」を研究対象とする学問ですが、そもそも「心」とは何でしょうか?
わたしたちは「心」というものの存在は何となく信じていますが、それを直接見ることはできません。でも、たとえば、ある人のことを「やさしい心の持ち主だな」と判断するときはどうでしょうか。「電車で席をゆずる」、「相談にのってくれる」など、その人の日常の中の具体的な行動を見て、その人の心を判断しています。
 このような日常の中の行動は、自発的で能動的な行動であり、特に「行為」とも呼ばれます。(なお、受動的な行動については、また別の機会に。)これらの行動は、直接見ることができます。

行動(行為)の原理
それでは、その行動について考えてみましょう。たとえば、「めがねをかける」理由とは?
「目が悪いから」「黒板が見えにくいから」と考えがちですが、そうではありません(杉山,2005)。

答えは、前回の模擬授業を参考にしてください。
#3 「ついやってしまう・・・」行動の理由― セルフコントロールの心理 ―

心理学の中でも特に、「行動の原理」に注目して、人間や動物の行動の理解するための研究や、行動の変容を必要とする人に応用し実践する分野は、「行動分析学」と呼ばれます。

さいころ講座#10-1
「めがねをかける」理由を行動分析学で解説。なお、解説前にはほとんどの人が「目が悪いから」と答えますが、解説前に正解を書いている人も毎回何名かいます(今回の模擬授業では約5%の正解率)。

大学生の「ついやってしまう・・・」行動例
「ついやってしまう…」行動は、行動分析学において、「セルフコントロール」と「衝動性」という枠組みで研究されています。今回の模擬授業では、実際に大学のゼミで取り組んだ以下の事例を取り上げ、行動分析学の枠組みを用いた解決法を紹介しました。

事例1:学校帰りに、つい、コンビニによって、スナック菓子を買ってしまう。
事例2:毎日、つい、夜、だらだらと過ごしてしまう。

学生の試行錯誤の末、無事に、どちらの事例も解決しましたが、共通するポイントは以下の4点です。みなさんも、自分、あるいは周りの人の「ついやってしまう…」行動の解決にチャレンジしてみてください。
さいころ講座#10-2

行動分析学への招待
行動分析学を初めて学ぼうとする人のために書かれた新しい本が、今年の3月に出版されました。
さいころ講座#-10-3

 特に、第1章「心とは何か」では、模擬授業の初めにも取り上げたテーマについて、詳細に解説されています。まずは、CASE①なぜ若者は暴走を繰り返すのか(p.8)、CASE④自閉症スペクトラムのある子どもの行動変容(p.20)を読み、その周辺から読み進めても良いかもしれません。もちろん、他のCASEもお勧めです。
 そして、授業後半で取り上げた「セルフコントロールと衝動性」の問題は、第8章:自己制御と「意志」の問題(p.246)から書かれています。少し難しく感じるかもしれませんが、授業での説明を思い出しながら読めば大丈夫です。ハトの「ついやってしまう…」行動を解決する方法も紹介されています(p.250)。

<おすすめの本>
①「行動分析学入門:ヒトの行動の思いがけない理由」(2005)杉山尚子(著)集英社新書
  ICON34行動分析学について分かりやすく解説(初級編)。授業の前半で取り上げました。
②「行動分析学:行動の科学的理解をめざして」(2017)坂上貴之・井上雅彦(著)有斐閣
  ICON34このさいころ講座で紹介しました(初級編)。
③「セルフ・コントロールの心理学:自己制御の基礎と教育・医療・矯正への応用」(2017)高橋雅治(編著)北大路書房
  ICON34セルフコントロールの発達と教育、勉強行動、ダイエット、糖尿病、慢性疾患、薬物依存、犯罪心理、経済行動など、セルフコントロール研究の最先端がまとめられている(中級編)。
④「行動と学習の心理学:日常生活を理解する」(2005) 伊藤正人 (著) 昭和堂
  ICON34「行為の原理」(能動的な行動)と「反射の原理」(受動的な行動)の違い、その研究の歴史と背景、日常場面の中にみられるそれぞれの原理について、映画や文学にも触れながら解説されている(中級編)。
⑤「現代心理学:行動から見る心の探求」(2013)伊藤正人(編著)昭和堂
  ICON34まずはコラムを読んでみましょう。大学の心理学の教科書(初級編)。

報告:空間 美智子

  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 14:58さいころ講座

#9 よき聴き手とは?―心理カウンセリング入門―

2018年06月25日

 人の話を上手く聴くことができると、いいことがある――聴くことの大切さを説く書籍が多く出版されています。良好な人間関係につながる、コミュニケーションが円滑になる・・・営業成績がのびる、なんていう話もあります。中身の違いはともかく、聴くことには一定の効用があると考えられているようです。もちろん、ひとの悩みに関わる心理カウンセリングでも、聴くことはとても大切です。しかし人の話を聴くということは、ある意味ではとても難しく、そして様々な感覚を総動員しながら行っている行為でもあるように思います。

「ありのままに聴く」
 心理療法家の杉原(2012)は、心理カウンセリングの実践にとって大切なことの一つとして、「ありのままを受け容れる」ということを挙げています。「ありのままに聴く」というと、一見どうということもないように思えるかもしれませんが、じつはなかなかに難しいことです。
例えば、傷ついた体験について聴く、ということを考えてみましょう。傷ついた体験についてじっくり話を聴いたことのある人は、高校生ではまだあまり多くないかもしれません。傷ついた体験について話を聴くと、じつは多かれ少なかれ聴き手も辛くなってきます。すると、辛いので、それを遠ざけたくなってくるのです。はじめは親身に聴くことができたとしても、だんだんと「いつまでそんなことを言っているのか」とか「そういったことは誰でも経験することだ」などと思えてきたりするかもしれません。つまり「ありのままに聴く」ということは、自分自身の中におこってくる辛さに持ちこたえながら、相手の話に耳を傾けるということでもあるのだと思います。

さいころ講座9-1

「先入観をもたずに聴く」
 自分の先入観でものごとを決めつけないこともまた、人の話を聴くうえで大切なことです。しかし、人は誰しもその人なりの見方(フィルター)を通してものごとをとらえ理解している、という面があることもまた確かです。
模擬授業では、このことと関連したワークを行いました。参加者の皆さんには、お話を聴いてもらい(大富豪ブルボン家の令嬢ソフィアほか、3人の人物が登場するお話です)、登場人物のうち、どの人物に好感を持ったか、順番をつけてもらいます。当然のことながら、つける順番も理由も人によって様々・・・そのことを皆さんと確認します。その後―――じつはそのお話には続きがあります。若い女性だと思っていたソフィアが実は、様々な人生経験を経た“いい年”の女性であることや、弱みにつけ込むかのような召使の言動の背景に切ない身分違いの恋があることが分かります。さて、改めて好感を抱く順に並べてみると―――。多くの場合、お話の続きを聞くと順番がつけにくくなるのは、自分の抱いている先入観を意識せざるを得なくなるとともに、登場人物それぞれが抱える様々な事情を知ると、単純には良し悪しを判断できなくなるからなのでしょう。先入観を完全に排することは不可能ですが、一見否定的に感じられる相手の言動にも様々な理由や背景がある、ということを頭において話を聴く姿勢は大切かもしれません。

さいころ講座9−2

「姿勢や調子を合わせながら聴く」
カフェなどで仲良しのカップルを観察していると、一方がグラスを口に運ぶともう一方もグラスを口に運ぶ・・・など、同じような動作が同じタイミングで起こってくる様子が見られるかもしれません。心理カウンセリングの場面でも、クライエントとカウンセラーの姿勢が互いに一致し、さらにカウンセリングが進行するにつれ、姿勢の一致がより長い時間生じるようになる、という研究報告があります(Charny,M.D., 1966など)。姿勢や動作が一致するということは、身体のレベルで相手と同じ状態を体感している、ともいえるかもしれません。相手がしょんぼりと肩を落としている時には、その姿勢を自分も少しばかりなぞってみる、相手に姿勢や調子を少し合わせながら話を聴くことは(逆に、相手と全く一緒になってしまうことは、相手との距離が取れなくなるという意味で、望ましくないように思いますが)、相手がいま・ここで体験していることを理解することにつながるように思います。

以上、心理カウンセリングの立場から、人の話を上手く聴く、ということについてお話をさせていただきました。考えるヒントになることがあれば幸いです。

Charny,M.D.(1966) Psychosomatic manifestations of rapport in psychotherapy. Psychosomatic Medicine, 28(4), 305-315.
杉原保史(2012)技芸としてのカウンセリング入門 創元社

報告:三好智子(2018/4/22 OC模擬授業より)

  


Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 20:43さいころ講座
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