現代人間学部 心理学科

行動観察に関する本

2014年01月20日

 心理学部の廣瀬です。最近読んで面白かった本について書こうと思います。それは、松波晴人著の『「行動観察」の基本(ダイヤモンド社)』です。

 行動観察は、科学的な研究法の一つとして、心理学はもちろん、人類学、社会学、生物学など様々な学問分野で古くから用いられてきました。ところが、近年は、学術研究だけではなく、ビジネス分野でも用いられるようになってきました。著者の松波氏は大阪ガス行動観察研究所の所長で、ビジネス分野における行動観察の日本での第一人者です。

 これまでは、主にアンケートやインタビューといった言葉を用いる方法で、消費者の心理を理解しようとしてきたのですが、これからは、消費者自身が意識していない深い心理まで知ることができなければ新しい商品やサービスを提供することが難しくなってきました。行動観察は、そのような言葉に出来ない人間の側面を行動を通して明らかにすることができます。

 この本の中では、実際に松波氏らが行った行動観察の事例が手に取るように詳しく紹介されています。心理学の教科書では、観察にはどんな種類があるか、いかに信頼できる観察を行うか、などが基本として取り上げられます。そういう点からみる、この本は「基本」ではなく、あきらかに「応用」の本なのです。しかしながら、初めての人が「行動観察とは何か」という本質を理解するには、心理学の教科書よりこちらの本を読むことをお奨めします。

 また、観察から得たデータだけに基づくのではなく、心理学を始めとする様々な知見を総合して、人間をどうとらえるか、ということが大切にされているように感じました。そういう点からも、心理学部の学生さんにも、ぜひ読んでもらいたい一冊です。

 報告:廣瀬直哉



Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 07:00│日記

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