現代人間学部 心理学科

公開講座『液晶画面に吸いこまれる子どもたち』を終えて

2014年10月30日

 去る10月18日(土)、心理学部・大学院心理学研究科主催の公開講座が開催されました。2005年の心理学部開設以来、恒例の公開講座ですが、今年度は下田博次先生、下田真理子先生ご夫妻をお招きし、『液晶画面に吸いこまれる子どもたち』と題する基調講演をいただきました。
 下田博次先生は群馬大学社会情報学部名誉教授で、まだインターネットがそれほど普及していない1990年代からネット利用が人々にどのような影響を与えうるのか、いち早く発信し警鐘を鳴らしてこられた先生です。奥様の真理子先生は、博次先生と共に「ホームページ ねちずん村」を立ち上げ、保護者の立場から子どもたちのインターネット利用問題に取り組んで来られました。お二人は自治体や教育関係機関で多くの講演会をされ、最近は市民インストラクター養成にも力を入れておられます。東奔西走のなか長野からお越しいただき、学生や教育関係者、地域の方々など200名弱の聴衆にお話しくださりました。

 基調講演では、「知性のためのクモの巣」として開発されてきたはずのWebが、「快楽ためのクモの巣」となっている現状を、アプリの使われ方のデータや実際の様子を交えて説明くださりました。携帯電話とスマホは一見似ていますが、法規制も実際の使われ方も違い、子どもたちの成長や生活状況に与える影響も格段に異なるため、大人たち、特に親たちがもっと知識を得て本当に子どもたちの成長にとって何が重要なのかを考えて「ペアレンタルコントロール」を果たしていく必要性が力説されました。
 博次先生からの解説と真理子先生からのデータや実例の紹介、それを受けておふたりが掛け合い形式で繰り広げる“ふたり講演”はとてもリズミカルで聴衆を引き込んでいきました。

公開講座『液晶画面に吸いこまれる子どもたち』を終えて
下田先生ご夫妻のリズミカルな基調講演

 後半のパネルは『スマホ世代の青年像』と題し、下田先生ご夫妻に加えて、本学部教員の尾崎仁美准教授、臨床心理学専攻の大学院生2名が登壇しました。
 尾崎准教授からは、大学生のスマホ利用についての意識調査やトラブル状況などについてアンケートデータが紹介され、現代青年の友人関係や孤独感のありよう、さらには自己形成の変化といった、心理学的に一歩踏み込んだ話題提供と解説をいただきました。
 また、大学院生の山本さん、田中さんは、ネットの現役世代としてだけでなく、臨床心理士を目指して実際に子どもたちにも関わる立場から、SNSでの過酷な対人ストレスや、ネットなしの世界を知らない今の子どもたちにとっての情報リテラシーやモラルの獲得について、話題提供や質問がなされました。

公開講座『液晶画面に吸いこまれる子どもたち』を終えて
パネルディスカッションはまだまだ続きそうな勢い

 パネルの最後、「では私たちはどうしたらよいのか」という問いに、お二人の先生から次のようなお言葉をいただきました。
 博次先生からは、現状を打開していくためには、メディア教育の専門家に加えて脳科学や心理学が参画した分野が新たに必要であること。真理子先生からは、自分のためでなく“他者・社会”のためにスマホを活用するかを考えてほしいということ。
 これらは次世代を担う大学生たちへのメッセージであり、心理学という学問領域への叱咤と期待だと思います。私たち心理学部にとっては、胸に響いた…ということをさらに超えて、今回のお話を日々の実践につなげていかねばならないと肝に銘じた一日でした。

 地域や社会に向けて何ができるのか、日々学生とともに考えながら、これからも心理学や教育の分野から発信していきます。京都ノートルダム女子大学心理学部に、これからもご注目とご支援をよろしくお願いいたします。

報告:伊藤 一美




Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 07:00│イベント

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