現代人間学部 心理学科

卒論への取り組み ―向山ゼミ 紙上インタビュー―

2020年01月07日

現代人間学部心理学科の3年生から始まる卒業研究や卒業論文では、ゼミに所属しながら学生達が自らの興味・関心に沿ったテーマで研究を進めていきます。
現4年生は心理学部心理学科の学生で、現代人間学部心理学科とはカリキュラムが異なりますが、全員が卒業論文の執筆に取り組みました。
向山ゼミの4年次生への紙上インタビューを通じて、ゼミ生達の卒業論文への取り組みを紹介します。

ゼミ生には、
 Q.1  卒業論文の題目
 Q.2  卒業論文のテーマに関心を持ったきっかけ
 Q.3  卒業論文の内容を分かりやすく紹介
 Q.4  面白いと思った結果

について尋ねてみました。
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Aさんの題目は、
「女子大学生の対人ストレスに対する反応に影響する要因」
です。

自分と同じような生活環境にある女子大学生が、人間関係でどのようなストレスを感じているのか?また、人間関係以外にはどのようなストレスがあるのか?ということに関心を持ったことがきっかけです。
ストレスという言葉は、日常的に使われていますが、ストレスを生じさせるもの(ストレッサー)には様々なものがあると思います。
また、対象となる人の年齢や職業によっても異なるかもしれません。本研究では特に女子大学生の対人ストレスに注目しました。

そこで、ストレスの内容やストレスを感じている程度、ストレスに遭遇した際の対処法、住居形態やアルバイト従事の有無などについて、女子大学生を対象に質問紙調査を行いました。
幾つかの結果のうちで興味深かったのは、買い物などでストレス発散をするより、誰かに話を聞いて貰うことがストレスを軽減させる、という結果が得られたことです。
このような結果は予想していなかったので、とても面白く思いました。
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Bさんの題目は、
「障害者に対する認識と支援に関する研究」
です。

以前から続けてきたガイドヘルパーのアルバイトを通じて、障害者への周囲の対応が様々であることに気づき、現状を明らかにしたいと思ったのがきっかけです。
卒業論文では、知的障害者の就労に焦点を当てました。

知的障害者が働く施設職員の方々にインタビューを行い、知的障害者への理解の現状や、福祉機関や支援員がとれる対策について調査しました。
その結果、障害者に対する理解はまだ十分ではないこと、理解を広めるためには障害者と健常者との「関わり」が重要であることが分かりました。
また、知的障害者の就労は国の施策により進みつつありますが、最初の就業にのみ力が注がれているため、就職後に障害者が困った時にこそ、福祉施設や支援員が手を差し伸べることが重要であると分かりました。

本研究を通じて、福祉機関や支援員が抱える限界や辛さなどの課題も示され、研究方法としてのインタビューの面白さ、質的研究の可能性や奥深さも感じることができました。
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Cさんの題目は、
「女子大学生の同性愛に対する偏見に関する実験的検討」
です。

友達とのおしゃべりなどの日常場面では、同性愛に肯定的な意見も否定的な意見もあって、人それぞれ。
案外、自分の周囲には同性愛に寛容な人が多いのかも・・・実際はどうなっているのかな?と考えたのがきっかけです。
ところで、人が意識的に示す態度と気づかず無意識的に示してしまう態度には、時に矛盾が見られます。
そこで、偏見をテーマとする本研究では、人の意識的態度と無意識的態度を取り上げることにしました。

女子大学生を対象に、質問紙で同性愛に対する意識的態度を、実験で同性愛に対する無意識的態度を測定しました。
そして、二つの態度の関連や偏見を抑制する動機との関連、日常での行動や関心との関連(同性愛者との関わり、ニュース等への関心、同性愛への知識)を調べました。

得られた幾つかの結果の中で面白かったのは、同性愛に関心のある人は多いのに正しい知識を持ってない人が結構な数いたことです。
また、同性愛に関心のある人の方が無い人よりも同性愛に対して意識的にも無意識的にも偏見を持ちにくい、という結果も得られました。
このことから、ニュースや教育現場で同性愛を話題にする時、正しい知識を身につけられる伝え方やや内容を工夫することによって、同性愛に対する偏見をもっと少なくできるんじゃないかな、と考えました。
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Dさんの題目は、
「女子大学生を対象とした日記法の研究 -ポジティブな出来事の振り返りの効果 -」
です。

このテーマに関心をもったきっかけは、素朴に“ポジティブ心理学って何だろう・・・?”と思ったことです。
ポジティブ心理学は、20世紀末に心理学者のマーティン・セリグマンにより提唱され、一般的には、個人や社会を繁栄させるような強みや長所を研究する心理学の一分野と言われています。例えば、病気の治療よりもどうすればもっと幸福になれるかについて考えたりします。

本研究では、このポジティブ心理学の考えをもとに、日記法による実験を計画しました。女子大学生を対象に、楽しかったことや嬉しかったことを一日の終わりに思い出して貰い、それを短い日記に書いてLINEの実験用アカウントに送って貰いました。
この日記は一週間続けるのですが、日記を書く前と書き続けた一週間後で、うつに関連する症状や不安などの気分がどう変化するのかGoogleフォームで調査しました。

その結果、個人差は見られるものの、うつに関連する症状や不安などの気分が軽減する人がいることが分かりました。
また、日記の内容を分類した結果、症状や気分のポジティブな方向への変化した人は、友達や家族と接したエピソードが多く書かれていることが分かりました。
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以上のように、4年ゼミ生達はそれぞれの興味・関心にもとづいて卒業論文の執筆を進めました。
各自がテーマに取り組むきっかけは、日々の生活の中にあることに改めて気づきます。
また、研究の方法も質問紙調査(アンケート)、実験、インタビューなど、様々な方法が用いられていますね。
さいころ日記をご覧になって、これらのテーマや研究方法などに関心を持った方は、また是非、関連の書籍なども読んでみて下さい。

3年生で所属ゼミが決定してから、テーマを探索し、文献を読み、研究方法や実施計画を練り、ゼミで発表し、実際にデータを収集して分析し、分析結果を読み込んで論文化する・・・。
この地道な積み重ねがようやく成果となりました。
卒論への取り組み ―向山ゼミ 紙上インタビュー―
4年ゼミ生の皆さん、頑張りましたね!

 報告:向山 泰代



Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 10:09│学生の様子ゼミ紹介

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