現代人間学部 心理学科

2022年度 心理学科・心理学研究科 公開講座 『ひきこもりとその支援 ―いまを生きること―』を終えて

2022年12月08日

去る11月6日(日)、本学NDホールにて(同時にオンライン配信)、本学心理学科・心理学研究科主催の公開講座を行いました。
この講座は、京都府、京都市、京都新聞、本学心理臨床センターから後援いただき、会場参加76名、オンライン(Zoomウェビナー)にて50名、計126名が参加されました。

今回は『ひきこもりとその支援 ―いまを生きること―』をテーマに、3名の講師に登壇いただきました。

2022年度 心理学科・心理学研究科 公開講座 『ひきこもりとその支援 ―いまを生きること―』を終えて

まず、本学科 中藤 信哉 講師より、日本のひきこもり支援の現状紹介を頂いたうえで、ご自身の研究テーマである「居場所」をキーワードとしたお話が展開されました。
居場所は「安心して自分らしくいられる場や関係性」と定義されることが多く、「すること=doing」と「いること=being」とを据えた時に、することを外から促されず、動けない自分も否定されず受け止められること・・・
つまり、まずは「being」の保証が大切であることが述べられました。
またそのためにも、当事者に関わる家族が安心できることの重要性や、自室から家族、家族以外の集団へと居場所が少しずつ広がることが伝えられました。

2022年度 心理学科・心理学研究科 公開講座 『ひきこもりとその支援 ―いまを生きること―』を終えて

次に、本学大学院の2019年度修了生 光永 智香 先生より、支援の実際についてお話いただきました。
光永先生は院在学中にも京都府ひきこもりポータルサイトのメール相談に相談員として参加し、今は堺市ユースサポートセンターにおいて、ひきこもり、ニート、不登校などの困難を有する方々とそのご家族の支援にあたっておられます。
「自分らしく、より良く生きる意欲や勇気を持てる」ことを目標に、相談機関が「〇〇しなければいけない場」になるのではなく、一人一人に合わせたチャレンジの場となるよう、就労だけ目指すのでもなく、何でも自分ですることを自立とするのでもなく、自分で決めながら社会のメンバーであることを感じられるよう、スモールステップでされている支援を丁寧に紹介くださいました。

2022年度 心理学科・心理学研究科 公開講座 『ひきこもりとその支援 ―いまを生きること―』を終えて

後半は、2021年3月に本学科を退職され、現在も精神科医として診察を続けつつ、在職中から京都府の自死対策やひきこもり支援にも尽力されている 河瀬 雅紀 名誉教授から、お話をいただきました。

2022年度 心理学科・心理学研究科 公開講座 『ひきこもりとその支援 ―いまを生きること―』を終えて

長年取り組んでこられた、京都府でのひきこもり支援活動の紹介ののち、「支援のゴールは社会参加や就労なのだろうか?」という問いが提起されました。
就学や就労、何らかの社会参加を目指す支援が行われる一方で、それがなかなか見通せないケース、こだわりが強くなり長期化するケース、そもそも変化に消極的なケース…そもそも「自分らしく生きる」ことの軸足が、社会参加ではなくひきこもりの場合もある…。
「支援」というと、支援する人・される人とが異なる立場のように考えがちです。
しかし、その前の2講師からのキーワード「自分らしく生きる」をつなぎ、本講座の副題である「いまを生きること」とは…当事者にとって・家族にとって穏やかな環境とは…イメージを広げていただきました。
長年屋敷から出ることなく死後多くの詩が発見されたエミリ・ディキンスンの一作品も引用され、今この時代にここで同じ地平を生きるものとして、なぜ、いかに、人は人とかかわるのか…本質的な問いが宿題として残る講演となりました。

講演後、フロアからも3人の講師それぞれに質問を頂き、時間が足りなかったという声も多くいただきました。
また、講座後のアンケートにも多く回答いただき、「具体的な支援について知れて良かった」「居場所の大切さを改めて考えた」「現在、当事者家族として、これからのかかわりに役立てたい」「自分らしさと社会参加のバランスの難しさ、ひとりひとり違うことを痛感した」など、参加者が主体的に関わって聞いてくださっていたことがうかがえました。

本学の心理学教育は20年以上の伝統を積み重ね、その学びを、心理的支援を必要とされる人や場に向けて、また社会の問題解決のために活かせるよう、多くの学生・大学院生を輩出しています。
今後も、心理学のテーマを基軸に、地域に向けて発信拠点、あるいは連携のハブとなれるよう、努力したいと思います。
どうぞ今後ともお力添えのほどお願い申し上げます。

   報告:伊藤 一美



Posted by 京都ノートルダム女子大学心理学科 at 19:35│イベント学科のトピック

< 2024年05月 >
S M T W T F S
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
過去記事